夜勤専従看護師って、どんな生活?キャリア・お金・働き方のリアルを聞いてみた。

公開:2026.05.07

「今日も夜勤明けなんですよ」。と語る中堅の男性看護師。
30代で自身の働き方について見つめ直し、選んだキャリアは「夜勤専従看護師」でした。それから5年。「いかにダメージを減らして働き続けるか」を追求してきた夜勤職人さん(ペンネーム)にその実態を語っていただきました。お金は本当に貯まるのか。スキルは落ちないのか。そして、孤独ではないのか――。

「夜勤専従看護師」という働き方を考えるときに気になるあれこれを、包み隠さず教えていただきました。
(聞き手:白石弓夏)

やりたくないことを消していったら、夜勤専従看護師にたどり着いた

――そもそも夜勤専従看護師を選んだのは、どういう経緯だったんですか。

1つ目の病院を辞めたのは、バーンアウト(燃え尽き症候群)でした。公立系の急性期で8〜9年、内科と外科の混合病棟にいたんですが、サービス残業が日常茶飯事で。3交代の夜勤でも日勤でも12〜13時間働いている。時間は変わらないのに、日勤には手当がつかない。

あるとき、看護師の平均給与と同年代の日本全国の平均を重ねたグラフを見たら、30代半ばで逆転していたんです。「あ、追いつくことはないんだな」と。これだけやっても給与の面で報われることはないんだと気づいた瞬間に、ちょっと絶望しましたね。このまま摩耗し続けても結果は良くないと思って、転職を決めました。

今回お話しを聞いた人:夜勤職人さん
広告代理店・不動産会社勤務を経て看護師に転身。公立系急性期病院(内科・外科の混合病棟)に8〜9年勤務後、民間の内科系病棟に転職。転職を機に常勤夜勤専従として勤務を開始し、今年で丸5年。病棟勤務と並行して訪問診療・訪問看護・施設など複数の職場を掛け持ち。

――転職先で夜勤専従看護師という選択肢にたどり着いたのは、どんな考えからだったんですか。

自分の性格として、無理を重ねる働き方は長く続かないと感じていて。仕事はあくまで人生の一部で、生活や自分の時間も大事にしたいという思いが強かったんです。やりたいことが特にないので、だったら「やりたくない」ことを「やらない」ほうにシフトしようと決めました。

たとえば、サービス残業が多い環境は嫌だ。休みが細切れになる3交代も嫌だ。じゃあ夜勤は?もともとサラリーマンの営業時代のほうがよっぽどしんどかったので、耐性はそこでできていたんだと思います。別に夜勤はしんどくはないし、手当もつく。やったことに対しての対価が出るなら納得できる。そう整理していったら、『夜勤専従看護師』という働き方が残った、という感じです。ちょっとネガティブなキャリアのつくり方ですよね。でも、やりたいことが見つかったらそのときやればいい、というのが僕のスタンスです。

――年齢を重ねると、体力的に夜勤を減らし始める方が多いですよね。5年で計画を立てたというのは、どんな計算だったんですか。

5年後までにいくら貯めるかを逆算して、そのための手段として夜勤専従を選んだというのが正確なところです。当初は夫婦2人だったので「これくらいあれば十分」という計算だったんですが、子どもができて、家を買うことになって。教育資金、住宅、老後資金……この3つが一気に増えたので、5年のつもりが延長戦に入った感じですね。

「意外に快適」だった。3交代2人体制から、2交代3人体制へ

――実際に夜勤専従を始めてみて、これは想定外だったということはありましたか。

意外に快適だな、というのが正直な感想でした。前の病院は3交代で、夜勤は看護師2人体制だったんですよ。40床以上ある外科系の混合病棟で、2次救急の輪番が当たる頻度も高くて。2人しかいないところに緊急入院が来ると、もう休憩なんか取れなくなる。本当にしんどかった。今は2交代で、看護師2人に介護士1人の3名体制です。休憩も2時間ほぼ確実に取れる。比べると、全然違います。

通勤が想定以上に快適で。月10回しか病院に行かなくていい、しかも夕方に出発するから車が混んでいない。1時間かけて行っているんですが、通勤ラッシュも渋滞もゼロです。出勤のストレスは一気に減りましたね。

――それは大きいですね。生活リズムはどう管理しているんですか。

自分なりのリズムをつくることが大事だと思っています。夜勤明けの日は夕方までしっかり休んで、休日はできるだけ朝に起きて日光を浴びるようにしています。普通に買い物に行ったり出かけたりして、日中の生活も意識して大切にしています。夜勤入りの日は、朝に用事を済ませてから、午後に少し仮眠を取って体調を整えて出勤する。夜勤明けに必ず立ち寄る店での食事など決まったルーティンがあって、それができないときは自分が不調だというサインになっています。

夜勤職人さんの、夜勤明けごはん(明け飯)。「夜勤を支えてくれたのはルーチンの明け飯たちと昼からアルコールを飲む優越&背徳感なのは間違いないです」とのこと

ただ昼夜逆転のダメージはどこかで必ず蓄積されます。いずれガタが来ることは想定しておいたほうがいい。だから「無理をしないで長く続けること」を意識して、ダメージコントロールを前提に働いています。

日勤は「攻め」、夜勤は「守り」。人が減ると、磨かれるものがある

――「夜勤専従はスキルが落ちる」「キャリアが停滞するのでは」という不安をよく聞きますが、実際はどうですか。

僕はそうは思わないですね。日勤と夜勤は、求められる役割が違うんですよ。日勤は処置や対応が多い「攻め」。夜勤は急変させない、現状を維持する「守り」。少ない人数で全体を安定して回すことが求められるので、リスク管理や優先順位の判断が重要になる。

夜勤専従を始めた頃は、まずスピードと量を意識して全体を回せるようにして、余裕が出てから質を上げていくようにしていました。時間配分も常に先手で動くことを意識していて。その積み重ねがアセスメントの視点につながったと思います。呼吸数1つの小さな変化でも、なんだろうと思うようになりましたね。日勤とは役割が違うだけで、キャリアが停滞するという感覚はないですね。

――逆に夜勤専従だからこそ身についたものもあるんですね。

業務改善の視点もそうですね。たとえばルーチンのタスクが重複しないように時間帯を変更したり、廃止に出来ないか検討する働きかけをしました。

少ない情報、少ないリソースでいかに回すか……省エネじゃないですけど、そこを考え続けた結果、「これは今本当に必要か」と問い直すクセがつきました。数で考えると、10人チームの力量は10×10で100、夜勤の3人だと3×3で9。いわゆるランチェスターの法則に通じる考え方で、正直10倍くらい違う。だから優先順位をとにかく意識するようになりましたね。個人の気持ちや経験よりも、仕組みと構造のほうが強い。そう思っているので、お気持ちじゃなくて仕組みを変えることにこだわっています。

――夜勤専従だと日勤スタッフとの接点が減る分、孤独を感じたり、患者さんの昼間の様子がつかみにくかったりということはありましたか。

僕はあまりないですね。夜勤専従でも常勤なのでプライマリー(受け持ち患者)も普通に持っていますし、サマリーも日勤の人たちと同じように書く。多分病棟で一番長いサマリー書いていますよ(笑)。

夜勤を一緒にする介護士さんが日中の様子をよく知っていますし、日勤スタッフからも話を聞ける。情報共有で困ったことは特にないかな。夜勤帯で気づいた改善点を日勤にフィードバックすることで、チーム全体に間接的に関わっている実感のほうが強いですね。

内科診療ヒントブックは夜勤の必携グッズ、いつもかばんに忍ばせています

逆算で貯める。夜勤専従看護師のお金と求人の本当の見方

――実際にお金の面では、5年間でどうなったんですか。

当初目標にしていた2,000万円の資産増加は、ほぼ計画通りに達成できました。年3回の賞与もあり、並行して株式投資もしていて、そちらは最近の世界情勢によって変動もありましたが、夜勤の収入のほうは着実に増えていきました。

――なるほど、夜勤の収入は安定した軸になっていたんですね。給与体系は実際どんな仕組みなんですか。

うちは基本給+夜勤手当という形ですね。ただ夜勤専従だと基本給がちょっと低めに設定されているケースもあるんじゃないかと思います。求人を選ぶときに確認しておいたほうがいいポイントだと思いますね。

――手当の多さだけ見て飛びつくと、実態と差が出ることもありますよね。ほかに求人を選ぶ際に意識しておくべきことはありますか。

まず何年後にいくら貯まっていてほしいかを決めることです。それが決まっていないと、1回の夜勤手当が高い求人に飛びついて失敗しやすい。高単価の求人は競争率も高くて、月に1〜2回しか入れないこともある。月2回×高単価より、月4回×中単価のほうが結果的に多く稼げることもありますから。コンスタントに入れる職場で長く信頼関係をつくるほうが、結果として得られるものが多くなるんじゃないかと。

常に求人が出ているような職場も、逆に言えば「来てくれた人を手放したくない」ということなので、シフトの融通が利くケースも意外と多い。福利厚生も含めてトータルで見ることが大事で、夜勤手当の金額だけで判断するんじゃなくて、いつまでにいくら必要かという視点から逆算して選んでほしいですね。

――夜勤職人さんは、現在5年計画の延長戦に入られたとのことでしたが、今後はどのように考えているんですか。

2028年度まで夜勤を続けながら、ある程度資産が貯まったら法人を立てる計画を持っています。看護師は続けながら、その先の選択肢を広げていくイメージです。看護師の免許って、診療科や業態を選ばず日本全国どこでも使えるじゃないですか。僕は専門性も特にない、普通の凡人なので。そういう人間が戦おうとしたら、広く浅くしかないんですよ。どのポジションにも入っていける広さがある。それを活かして積み上げていくのが自分のスタイルです。

「出口」を決めているから、夜勤専従看護師を続けられる

――最後に、夜勤専従看護師として働くことを検討している方へメッセージをお願いします。

向いているのは、選ぶ理由を自分なりに言語化できていて、その先の目標や生活のイメージを持てている人だと思います。最初は「負担を減らしたい」という気持ちから入っても全然いい。ただ、逃げた先で自分なりの意味を見つけていけるかどうかが、長く続けられるかどうかの分かれ目になります。自分で選んでいる実感が持てないと、どこかでしんどくなる働き方だと思いますから。

だからこそ『出口』も意識しながら働くことが大切で。いつまでこの働き方を続けるのか、その先になにがあるのかを自分で決めておく。僕も最初は5年と決めて始めたし、今も続けるかどうかは常に考えています。モチベーションに頼らず、自分が選んだ場所で淡々と動き続けられる人が、夜勤専従という働き方を本当の意味で使いこなせるんじゃないかな、と思っています。

ジャズの裏打ちみたいなイメージですかね。みんなと同じだから安心、というのも幻想だと思っているので。大手でも潰れるときは潰れるし、外に出ることを恐れるより、自分がまだやっていないことを試してみる。そのどこかのタイミングで、「自分が選んだ場所にいる」という感覚を掴み取ってほしいですね。

――夜勤専従ってとにかく体力で乗り切るイメージがあったんですけど、こんなにキャリアや人生設計をしっかり考えながらやっている人がいるんだというのが、今日一番の発見でした。ありがとうございました。

ABOUT