看護の知識があれば教育にも活かせる?本読んで考えた。(考えたひと:看護師のおとも)
公開:2025.05.06

看護の現場での体験や、本を読んで気づいたことなどをリレー形式でご紹介していきます。
今回は「看護の知識があれば教育にも活かせる?」について、看護師のおともさんが考えました。
看護師のおとも
救急外来で臨床を、主任として管理を、シミュレーションで教育を三本柱で実践中。本好きが高じて「 #看護師さんと本屋さん」企画副代表。今も昔も自室の本が多く、部屋は本棚だらけ。でも隙あらば本屋に寄っていきます。
今回私が読んだ本は「教えることの基本となるもの 「看護」と「教育」の同形性」という本です。

「看護」と「教育」が同じ形をしている
本書のタイトルにもなっていて、P42第3章で触れられる言葉です。この文言を見たとき、「一体どこが同じだというのか」と率直に感じたことを覚えています。
そもそもこの本を手に取ったのは、看護師として他のスタッフに教育をする機会が増えてきたにも関わらず、自分は教えることについてなにも知らないという悩みを持ったことがきっかけでした。
しかし、本屋に行っても今まで看護だけを学んできた自分に取って「教育を学ぶとはどういうことか」ということさえ知らなかったのでなにを探してもピンと来るものではありませんでした。そこで目に入ったのがこの本です。
看護なら今までも学んできている、しかしそれと同じ形をしているとはどういうことなのか。でも形が同じだというのであれば、学び方も似ているのかもしれないと、探し求めていたものをついに見つけた思いでした。
この本のすごいところは、教育の話をしながらも「看護だとこういう表現になりますよね」と、今まで学んできたことに置換して内容を伝えてくれるところです。
たとえば、学習者にも「方向」があるということを述べる部分があり、「学習者の方向ってなんだ?」と疑問に思っていると、「看護の世界でいうニードと置き換えてください」と述べられており、その瞬間にストンと腑に落ちる感覚を覚えるのです。
そして看護と教育が同じ形をしているということを、じわじわと実感していくのです。
後輩を萎縮させる「コブラ先輩」になっていないか?
よく後輩に対して「積極性がない」「なにも聞いてこないからだめだ」と言う先輩がいます。しかし、別のスタッフから見ると「よく頑張っている」「よく質問してくる」とまるで真逆の評価であることも珍しくありません。
こうした現象を本書では、コブラ先輩、あるいはコブラ先生と表現しています。学生や後輩が蛇に睨まれた蛙のようになってしまい、動けなくなってしまうからです。そしてそのことに対してコブラは自分がそうさせているという自覚がありません。
そうするとますます小言が増えていき、コブラ化が進んでいきます。看護が看護師と患者の相互性の場であるように、教育の場も教育者と学習者の相互性の場であります。
以前、私の部署に入ってきた後輩がいました。転職してきたばかりで、まだまだ馴染むのにも時間がかかるというタイミングです。しかし、あることがきっかけで別のスタッフがこの後輩を強く叱責することがありました。
その後から、後輩はそのスタッフを見ると過緊張状態になって手が震えたり、不安になると言うことを訴えてきたのです。そしてそのスタッフの方は「言うべきことを言った」と思っているため、後輩が今まで以上に萎縮していることに気がつきません。まさに自分の職場で蛇に睨まれた蛙、そして蛇が蛇であることに気が付かない現象が起きていたのです。
先輩ナースの「コブラ化」を脱する勉強会をやってみた
このままではいけないと考え、本書を手に取って一気に「教え方の勉強会」の資料を作り上げました。そして師長に懇願し、時間を作ってもらって連日全てのスタッフに対してこの勉強会を行うことができました。


最終的に、スタッフにこの試みが響いたのかはわかりませんが、後輩は結婚して退職するまで、この部署で働き続けることができました。またスタッフの方も、他のスタッフから「物腰が柔らかくなった気がする」と言われてもいました。
新しい分野の学びというのは簡単なものではありません。もし全て初めから学ぶしかないと思っていたら、もっと興味を持つことも、これほど迅速に学びを実践することもできなかったでしょう。しかしながら、今まで学んできたことを活かせる、これまでの学びに置き換えて考えてみるというところから少しずつ発展させていくことによって納得のいく読後感にも恵まれます。
この本を読んだことをきっかけに、教育に関する書籍の方へ徐々に学びを広げにいくことになりました。看護の領域の軸足を置きながら、他分野を学ぶことが自分にとっては学びの幅を広げる良いきっかけになったのだと思います。そして世の中には、看護に関する書籍や看護をベースにしつつ、他分野へと誘ってくれる書籍がいくつもあります。この本は自分にとって、他分野をもっと広く、そして深く学んでいこうと思うきっかけになった一冊なのです。 今では、教える立場になった後輩看護師に「看護と教育は同じような形をしているからそんなに難しく考えなくても大丈夫」と伝えています。
▼紹介した本
目黒悟|教えることの基本となるもの:「看護」と「教育」の同形性(メヂカルフレンド社)
編集:白石弓夏
Nurse Life Mix 編集部です。「ライフスタイル」「キャリア」「ファッション」「勉強」「豆知識」など、ナースの人生をとりまくさまざまなトピックスをミックスさせて、今と未来がもっと楽しくなる情報を発信します。