蘇る私、ハンバーガーと炭酸ジュース。
公開:2024.09.30
長い夜勤を終え、スクラブを脱ぎ、疲れた足を引きずりながら帰路につく。疲れを癒すのは、夜勤明けの一食「明け飯」です。冷えたピザを急いで頬張る者もいれば、家族の愛情が詰まった栄養満点の朝食を楽しむ者も。
「明け飯」には、単なる空腹を満たす以上の意味があるのかもしれません。安堵感、達成感、時には寂しさや切なさ。様々な感情が交錯する、特別な時間。
特集「明け飯の話」では、看護師の皆さんの心に刻まれた「夜勤明けのご飯」にまつわるエピソードをお届けします。
第1回は、看護師兼ライターの白石弓夏さんのエピソードです。
蘇る私、ハンバーガーと炭酸ジュース。
夜勤をしなくなって数年…。
それなりに看護師経験と、現在の職場での経験を積み、いわゆる中堅~ベテランになりつつある私。
昔ほど怒られたり、落ち込んだりする機会は少なくなってはきたが、それでもたまにミスをしてしまったり、うまくいかなかったりすると、昔よりも深くズーンと落ち込むようなときがある。
そんなとき、ふと懐かしく思い出すのが、夜勤明けの食事”明け飯”のこと。
以前まで勤めていた病院で夜勤をしていたときによく食べていた明け飯は、今でもたまに無性に食べたくなる。
夜勤をこなしながら、新人指導に看護研究に委員会と、目まぐるしい日々を送り、その合間を縫って趣味のライブや飲み会に明け暮れていた頃。
あの頃の私は、身体も心も一番パワフルで輝いていたように思う。
そんな日々を支えていたのが、夜勤明けのハンバーガーと炭酸ジュースだった。
24時間営業のハンバーガーチェーン店。朝5時から10時30分までは朝メニューとなるため、できれば10時30分を待ち、通常メニューのセットで、ポテト(M)の塩分と炭酸ジュースをドカドカ摂取する。
それは夜勤をやり切った達成感とお腹が満たされる至福のとき。
単にお腹が空いているから食べるというより、濃いめの塩分と炭酸による喉の刺激が心地よい快感となって、疲れた身体を癒してくれるのだ。
これは夜勤をやらなくなった今でも、限界まで仕事をした後に無性に食べたくなる。
まるで本能が呼び覚まされるかのように。
かつてのようなパワフルさは薄れ、少し落ち着いてしまった今の私。
でも、明け飯を通してあの頃の元気をそっと取り戻すような、そんな不思議な感覚。
ハンバーガーを口にすると、あの頃必死に頑張っていた自分がいたからこそ、今の自分があるのだと、しみじみと感じる。
早朝から営業しているハンバーガーチェーン店では、おそらく全国で多くの看護師が明け飯を楽しんでいるだろう。
私にとっては、単なる食事以上の特別な思い入れがある場所だ。
「よし、ちょっとジャンキーなものを食べちゃったけど、今日はOK!また明日から頑張ろう!」
そう自分に言い聞かせながら、かつての自分の情熱と経験を糧に、今日も私らしく頑張ろうと思う。
編集:白石弓夏
イラスト:こんどうしず
看護師兼ライター。小児科や整形外科病棟で10年以上勤務。転職の合間に派遣でクリニックやツアーナース、健診、保育園などさまざまな場所での看護経験もあり。現在は非常勤として整形外科病棟で働きながらライターとして活動して5年以上経つ。