『看護師さんと本屋さんに行こう』トークイベント~自分に合った看護書の探し方~」開催レポート

公開:2024.11.01

2024年9月28日、紀伊國屋書店新宿本店の3階アカデミック・ラウンジで「『看護師さんと本屋さんに行こう』トークイベント~自分に合った看護書の探し方~」が開催されました。このイベントは現役看護師の有志グループが企画し、本好きの現役看護師4名が登壇。約40名の参加者を前に、本屋の魅力や本の選び方について語りました。

※ナースライフミックスの運営会社、クラシコより衣装を提供させていただきました。
※ナースライフミックスは「看護師さんと本屋さんに行こう」の活動支援パートナーとしてオンライン上でのコンテンツ展開をサポートしています。
【登壇者プロフィール】
※右奥から順番に

・看護師のおとも(以下、おともさん)
救急外来部門・シミュレーションセンターで臨床と教育に従事
最近買った本:『職場で傷つく―リーダーのための「傷つき」から始める組織開発』

・看護師のかげ(以下、かげさん)
呼吸器センターの病棟看護師、イラストレーター
最近買った本:『エンドオブライフケア学 “自分らしく生きる”哲学』

・ヨっちゃん@看護師(以下、ヨっちゃんさん)
NP(診療看護師)の大学院生2年目
最近買った本:『特定看護師 研修内容と実像、そして期待される役割』

・まつなが(以下、まつながさん)
看護師・保健師、会社経営者、よぞら訪問看護ステーション代表
最近買った本:『文化はいかに情動をつくるのか 人と人のあいだの心理学』

発起人のかげさんは企画の背景について「臨床で後輩に指導しているときに、書籍の話をするんですが、本屋に行くことがないとか、どの本を買ったらいいのかわからないって質問をよく受けるんです」と語りました。この経験から、全国の看護師さんに紙の本や本屋さんの魅力を伝えたいと考え、紀伊國屋書店の書店員さんからの企画提案を受けてこのイベントが実現しました。

※トーク内容を一部抜粋してお届けします

なぜ電子書籍ではなく、紙の本を買うのか

最初の話題は、電子書籍が普及するなか、紙の本を選ぶ理由について。

まつながさんは、「知りたいところだけピンポイントで調べられるのは、電子書籍のいいところかもしれないですね。ただ、紙の本だと開いたときに知りたいことの周辺情報も一緒に調べられて、こんなこともあるんだと新しい情報に触れられるのもいいところです」と語りました。

ヨっちゃんさんは、「物理的な所有感やコレクター精神を大いに刺激してくれるのが紙の本」だと語り、「紙の本なら、パッと目的のページを開けることもあって。よく自分が開いているページは開き癖がついていて、この速さに電子書籍はかなわないんじゃないかな」と紙の本の強みを説明しました。

おともさんは、「僕も電子書籍はまったく持っていないわけじゃなくて、分厚く重たい本は電子書籍も買うなど、用途で使い分けています」と語り、持ち運びの便利さと読みやすさのバランスを取っていると話しました。

どういうときに本を買う?書店に行くのはどういうとき?

コロナ禍で本屋に行く頻度が減った看護師さんも多いかもしれません。どういうときに本屋に行って本を買うのでしょうか。

「いつも夜勤明けに、ふらふら本屋に寄って帰ることが多い」と語るかげさん。その理由を「臨床でこれについてもっと深めたいな、この治療についてはあまり勉強していなかったなというときに、臨床と知識を結び付けたい気持ちのまま、本屋に行くんです」と説明しました。しかし、夜勤明けに本屋に行くのは「意味がわからない」とよく後輩から言われるそうです。

おともさんは、衝動買いもよくあると言います。「我々は専門職なので、その知識がないと患者さんの対応がうまくできないとか、治療に臨めないというのもありますからね」

まつながさんとヨっちゃんさんも、買い物やなにか用事のついでに本屋に行ったら、気づいたら2時間経っているということも少なくないとか。文字量や文体など書籍によって特徴が違うため、自分に合う本を探すために、みなさん本屋を訪れているようです。

普段、どうやって本を選んでいるか

同じテーマの本が複数あった場合、どのようにして本を選ぶのでしょうか。

かげさんは、「私はまず本屋に行ったら、目次から見るんです」と語り、自分が学びたい分野に沿った内容が載っているか、文字の多い書籍を選びがちで、索引も重要視していると付け加えました。

おともさんも「目次を見たり、著者のまえがきとあとがきを読んだりします。なぜなら、どういう人に向けてどういう思いがあって書いたものなのか、どういうところがポイントになるのかがわかるからです。また、参考文献の数もチェックします」と語りました。

ヨっちゃんは、「自分が知りたいと思っている情報がそこに載っているかまず確認しつつも、自分にとってそれが読みやすいのか、図が見やすいとか文章の書き方とかも気にします」「自分が知りたい情報プラスαで他の情報もたくさん載っているものが好き」と語りました。NPの実習に向けて購入した本は、この半年間で50冊はゆうに超えているそうです。

買った本はどういうところで活かされているか

おともさんは、7年前に購入して何度も読み返している付箋だらけの本『組織における成人学習の基本』を紹介。看護書ではなかなかピンとくるものがなく、本屋さんの看護・医療の棚ではない棚で出会ったそうです。本屋では、こうした思わぬ出会いがあることも魅力だと話してくれました。

かげさんは、救命救急センターに異動した際に購入した『脳卒中急性期観察とドクターコール』を紹介。「特に対応する診療領域が広いなかで、脳卒中の患者さんとかかわるときに緊急度や重症度が高い場面が多く、勉強が追い付かない不安が強くあったときに買った本」だと説明しました。それとは別にポケットブックもいくつか買い、電子カルテのパソコンのそばに置いておき、よく使っていたといいます。

ヨっちゃんさんは、『プライマリ・ケア看護学』を「自分の看護のルーツといっても過言ではない」と紹介。「さまざまな知識体系のことや教育に関することをはじめ、地域看護などについても盛り込まれていて、かつ実践的な本で感銘を受けました。診療看護師を目指そうと思ったきっかけの本でもあり、インプットとアプトプットが両方できる本」と語りました。

まつながさんは、自身も制作に携わった『できる訪問看護師と言われるために3年目までに知っておきたい105のこと』を紹介。「現場で働く訪問看護師はもちろん、転職しようか迷っている看護師、経験を積んできて後輩指導にあたる看護師や役職がついてチームをマネジメントするような立場の看護師が使えるような情報が、ぎゅっと盛り込まれています」と語りました。そして、「訪問看護を経験したうえで、その先に自分たちにどんな人生の選択があるのか」と考えられる内容も含め、50人の看護師が制作に携わっているのもポイントだそうです。

価格のハードルを越えて本を買う

かげさんは、「私はずっと看護師を続けようと思っているので、自分の仕事に必要な出費だと価格は考えずに買ってしまいます…迷ったら2つ買う(笑)」と語り、「高い本だからこそ、しっかりと自分に合うものを選ぶことによって、そのハードルを感じなくなるのでは」とアドバイスしました。

ヨっちゃんさんは、「高い本はその分内容が充実していることも多いので、長期的に使用できるのであれば自己投資だと思って購入します。短期的にみると高価に思えるようなものでも、知識は一生なので」と付け加えました。

まつながさんは、「この本面白かったよと周りに伝えて、貸し借りすることもありますし、自分も借りて読んでみて、すごく良かったからと後日買いに行く経験もよくあります」と、紙の本のシェアできるというメリットについても語りました。

おともさんは、「でも、やっぱりその本は今買わないとなくなってしまいそうだなとか、今買ってちゃんと売れていることを証明しないと、次が出ないかもしれないと、いろいろ考えつつ買うこともあります」と語りました。実は過去に1万円もする看護書を買ったことがあるそうです。

質疑応答

トークテーマの後は、参加者からの質問タイムがあがりました。

最新情報はどのように入手していますか?

かげさんは、コロナ禍初期の経験を例にあげ、「超急性期の頃は厚労省から出ているガイドラインや感染部門からの情報をもとに対応していました。ただ、少し落ち着いてきたタイミングで、情報がまとまっているのは看護雑誌でした」と語りました。

おともさんは、「もし職場でその分野に詳しそうな医師がいれば、直接聞くこともあります。普段どこで情報を得ているんですかと聞くと、だいたい論文で返ってくるので、もう少しわかりやすい本ないですか」と直接相談の方法を、「SNSでは医療系出版社さん、書店さんのアカウントも活発なので、フォローしておくと新刊情報が入ってくるので便利です」とSNS活用法を提案しました。

忙しい日々での読書時間はどう確保していますか?アウトプット方法はなんですか?

「まずは子どもを寝かしつけてから」と語るのはおともさん。「今日はこういう予定があるからと妻にお願いして、自分の世界というか、隔絶された時間と場所をつくるのが1つの方法ですね」と子育ての大変さに共感しつつ話しました。アウトプットに関しては、「どうすると定着するかは人それぞれで、人に話す、書き出すなどがあり、自分の場合は何度も読むことが多いです。なんかこのへんに書いてあった気がするって、よく読み返します。あとは自分が率先して勉強会を開いて、資料をまとめることですね」と語りました。

買った本を読み飛ばしてしまいます。頭に入ってきにくいときはどうしたらいい?

おともさんは、「あっさりとでも本を手に取るだけでもいいのかなって思います。そのときは理解できなくても、何年か経ってからもう一度読み直したときに、ここに答えがあったんだとか、今ならこれが理解できるというタイミングが来ると思うので。その瞬間をお楽しみとして残しておいてもいいのでは」「自分もすべての本を読んでいるわけではなく、つまみ食いのようにあちこち読んでいるものもあります」と話してくれました

まだまだ今後もイベント、選書フェアは続きます!

4人それぞれの本に対する想いが詰まった時間となりました。このイベントを通じて看護師になってよかった、仕事や勉強が楽しいと感じる人が増えることへの期待を最後の締めに語りました。トークイベント後はかげさんのサイン会も開催!

紀伊國屋書店新宿本店6階看護書売場では『看護師さんと本屋さん 選書フェア』を11月末頃まで開催しています。

イベントで紹介された本や登壇者おすすめの書籍が展示されていますので、ぜひ足を運んでみてください。あなたの人生を変える1冊が待っているかもしれません。

文:白石弓夏
Nurse Life Mix 編集部 Nurse Life Mix 編集部

Nurse Life Mix 編集部です。「ライフスタイル」「キャリア」「ファッション」「勉強」「豆知識」など、ナースの人生をとりまくさまざまなトピックスをミックスさせて、今と未来がもっと楽しくなる情報を発信します。

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