看護職のプロ意識はどこで育つ?本読んで考えた。(考えたひと:看護師のおとも)
公開:2025.06.09

今回は「看護職のプロ意識はどこで育つ?」をテーマに、看護師のおともさんが考えました。
看護師のおとも
救急外来で臨床を、主任として管理を、シミュレーションで教育を三本柱で実践中。本好きが高じて #看護師さんと本屋さん 企画副代表。今も昔も自室の本が多く、部屋は本棚だらけ。でも隙あらば本屋に寄っていきます。
看護職のプロフェッショナリズムはどこにあるや
はじめに、プロフェッショナルとは専門職のことです。もしも誰かに「看護師は看護のプロですか?」と聞かれたら、多くの看護職は「そうだ」と答えると思います。看護の専門職ということです。
では、「看護師としてプロ意識を持っていますか?」と聞かれたらどうでしょう?「持っている」と答えられる看護職はそう多くはないのではないでしょうか。そもそも、看護師は看護師としてのプロフェッショナリズムを、いつ、どこで、どのように育てていくのでしょうか。
薄いのにずっしり重い一冊との出会い
この『ABC of 医療プロフェッショナリズム』という本は、医師のプロフェッショナリズムを紹介しており、薄い本でありながら持っている質量は特に凄まじいと感じるお気に入りの一冊です。

この本では、医師のプロフェッショナリズムを「公衆が医師に対して抱く信頼を裏付ける一連の価値観、行動、および関係性」が一般的合意であることを引用で紹介しています。これは医師の部分を看護職、あるいは他の医療職に置き換えても成り立つものだと思います。
学んだ覚えは、ない。でも…
かれこれ20年ほど前に看護教育を受けた自分としては、このような心構えを学んだ記憶は正直なところありません(授業をサボっていたわけではないです)。
一方で、自分が看護職としてのプロフェッショナリズムに欠けているか?と聞かれると、「そうではないだろう」と思うところもあります。その考えはどこからくるかというと、医療者として自身を省みたときに、そこまで非常識な言動や行動はしてないと思う……程度の主観的評価でしかないのだけれど。
皆さんはどうですか?思うに看護師の場合は、看護職の倫理綱領を土台としつつ、プロフェッショナリズムの概念を『看護観』という言葉に置き換えてそれぞれの行動規範としているのではないでしょうか。
理想的な医療者として
そもそも自分がこの本を読むに至った経緯として「看護師にはプロフェッショナリズムの教育はあるのか?」と医師に聞かれたことが始まりでした。その時点では全くピンとくるものではありませんでした。なにしろ習ってきていない概念だったのですから……。
どうやら調べたところ医師は医師としてのプロフェッショナリズム教育が行われているらしいと知ったのです。
プロフェッショナリズムがなければ、守れない
医療者は患者のあらゆる情報にアクセスできる可能性があり、家族も知らない個人のプライバシーレベルの高い内容を知る立場にある、法律のもとで侵襲的な行為が許されている職業です。有智高才の傑物で、博覧強記の勤勉さがある、卓越した技術を持っているだけでは患者の安全を守ることができないことは言うまでもありません。つまり医療者としての高いプロフェッショナリズムが、患者を守ることに繋がっており、逆もまた然りなのです。
「それでよかった?」と問う力
皆さんは看護師として、ニュースで取り上げられるような看護師が関わった事件をみて「それは看護師の行いとして相応しくない、信じがたい」と感じたことはないでしょうか。あるいは、ふとしたときに「今の自分の行動は良くなかった」と省みることはないでしょうか。こうしたアンプロフェッショナルな振る舞いに気づき、修正できることも専門職として重要な要素です。
そしてプロフェッショナリズムというものは個人だけではなく、他者との相互作用や関係性にも影響します。今までもたくさんの医師、看護師とともに働いてきましたが、それぞれに医療従事者としての高いプロフェッショナリズムを何度も見てきました。
プロフェッショナリズムは現場にあって、自分の中にもある
ある救急医が、幼い子どもを亡くして悲嘆にくれるご両親の前で死亡確認をするときに、一つひとつの所作を丁寧に行い、最後には「本当に悲しいことだと思います。ご家族のお気持ちに寄り添いきれず、力不足で本当に申し訳ないです」と膝をついて深々と頭を下げた姿に感銘を受けました。
遡ればコロナ禍が本格的になる前、まだワクチンもなく明確な感染経路も不明で誰しもが恐怖を抱いていた頃。「これからコロナ患者の受け入れを始めるけど、自分たちがやってきた知識と経験を信じましょう。どんなウイルスでも感染経路があるし、そしてそれを断つ術は必ずある」と全体をまとめようと奮闘していた感染対策室のスタッフもまた、高いプロフェッショナリズムに溢れていたのだと感じます。今、この瞬間も日々の診療の中で個々のスタッフがそれぞれにプロフェッショナリズムを持って働いているのでしょう。
医療者としてのプロフェッショナリズムとはなんぞや、と問われると堅苦しいもののようにどうしても思ってしまいます。ですが、真に理想的な医療者だったらどんな行動をするのか、どんな声掛けをするのかというように考えてみると、自分の中のプロフェッショナリズムが輪郭を持ち始めるのかもしれません。
▼紹介した本
「ABC of 医療プロフェッショナリズム」
宮田靖志/翻訳,Nicola Cooper,Anna Frain,John Frain/編
2020年発行,羊土社
Nurse Life Mix 編集部です。「ライフスタイル」「キャリア」「ファッション」「勉強」「豆知識」など、ナースの人生をとりまくさまざまなトピックスをミックスさせて、今と未来がもっと楽しくなる情報を発信します。