#01 救急看護師・あきさんの場合【第1話】
公開:2024.04.15
わたしたちナースには、あの時に出会った患者さん、そのご家族について忘れられないことがある。
迷い、不安、いろんなものを抱えながらも、自分なりにできる限りのことをした瞬間だった。
特集「あの日、わたしはナースとして」では、実際にあったそんなエピソードを描き、今この日々を頑張るすべての看護師の方に悩んでいるのは一人じゃないということを伝えていきたいと思います。
第1回はあきさんが、救急看護師として働いている時に体験したエピソードです。
迷い、不安、いろんなものを抱えながらも、自分なりにできる限りのことをした瞬間だった。
特集「あの日、わたしはナースとして」では、実際にあったそんなエピソードを描き、今この日々を頑張るすべての看護師の方に悩んでいるのは一人じゃないということを伝えていきたいと思います。
第1回はあきさんが、救急看護師として働いている時に体験したエピソードです。
延命治療をどうするべきか
突然の脳出血で倒れ、救急搬送されたAさん。奥様が駆けつけた時にはすでに意識がない状態であった。脳出血は生命に直結するほどに広がっており、外科的な適応もないと診断された。
私は看護師として医師の説明の場に同席した。奥様は動揺や悲しさの中でも、延命治療についてはAさんの性格をよく理解しているようで、「本人は無理な延命治療はしたくないんだと思います。」と話していた。
看護師として、突然の発症、予後不良な家族の知らせに動揺や予期悲嘆は当然の反応と捉え、無理な代理意思決定は進めず、ただただ、気持ちを傾聴し、思いを肯定しながら関わっていた。
治療を希望する母の想い
一方でAさんのお母さんは、面会のたびに「この子はきっと大丈夫」、「できる治療は全てやってほしい」と話していた。
本当はどう考えているんだろう
1週間が経ち、私は主治医から、意識の回復がないこと、改善の兆しもみられないことから、このまま人工呼吸器を含めた積極的治療をご家族はどう考えているのかと相談された。
徐々に現状の理解は進んできていると判断した私は、奥様が面会にきた時に「お話ししませんか?」と声をかけた。
普段は奥様とお母さんが同時に面会に来ており、互いの本音をあまり話せないでいるのかもしれないと考えていたためだ。すると「いいんですか?実は私もちょっと相談したいと思っていたんです。」と快諾してくれた。
文:あき
イラスト:せきやよい
イラスト:せきやよい