#01 救急看護師・あきさんの場合【第2話】
公開:2024.04.15
わたしたちナースには、あの時に出会った患者さん、そのご家族について忘れられないことがある。
迷い、不安、いろんなものを抱えながらも、自分なりにできる限りのことをした瞬間だった。
特集「あの日、わたしはナースとして」では、実際にあったそんなエピソードを描き、今この日々を頑張るすべての看護師の方に悩んでいるのは一人じゃないということを伝えていきたいと思います。
第1回はあきさんが、救急看護師として働いている時に体験したエピソードです。
迷い、不安、いろんなものを抱えながらも、自分なりにできる限りのことをした瞬間だった。
特集「あの日、わたしはナースとして」では、実際にあったそんなエピソードを描き、今この日々を頑張るすべての看護師の方に悩んでいるのは一人じゃないということを伝えていきたいと思います。
第1回はあきさんが、救急看護師として働いている時に体験したエピソードです。
お母さんの気持ちもわかるから…
話しやすいよう本人の目の前でなく別室を用意して、これまでの思い、今の悩み、葛藤について奥様から話を伺った。「本人のクールな部分や、繋がれてまで生きたくないなと言っていたことを思い出したりして、やっぱり今の状態で生かされているのは違うかなと思います。無理させたくないって。でも、母として息子の命をなんとしてでも繋ぎたいと思うお母さんの気持ちはすごくわかる。だからもう無理させたくないなんて言えないんです。お母さんの気持ちもわかるから。」と率直な葛藤を話してくれた。
奥様の強さと優しさを感じた私は
私は、一番大切な家族が危機的状況にあり、悲しみの日々を送りながらも他の重要他者の気持ちを理解している奥様の強さ、優しさを感じた。
代理意思決定の結論に現段階で違いがあっても、本人を大切に思う根底にある気持ちは同じであると思った私は、こう伝えた。
悲しみや苦しさを一番共有できるのは
「大切な人が厳しい状況にいる悲しみや苦しさを一番共有できるのはお母さんだと思うので、その思いだけでも共有してみてはいかがですか?」
奥様は「なるほど、そういう方向でお母さんと話してみたらいいんですね。意見を押し付けるというより、気持ちを共有するんですね」と。少し柔らかい表情で帰宅された。
文:あき
イラスト:せきやよい
イラスト:せきやよい