「助ける側」も被災者になる──看護師と防災について、本読んで考えた。
公開:2025.10.28
今回は、11月5日に迎える「津波防災の日」を前に、「看護と防災」について、なぜなにナースさんが考えました。
なぜなにナース
ICU/HCU病棟や慢性期病棟で勤務してきた看護師。現在は再びHCU病棟で働き、今までの経験をフル活用中。ICRN-K(集中治療認証看護師-知識認証)、呼吸療法認定士、ICLSインストラクター。本は心の栄養です。
災害のとき、スマホが使えなかったら?本が手元にある安心
突然ですが、皆さんは、防災についての本を持っていますか?
恥ずかしながら、私は今回初めて防災の本を手にしました。理由は「インターネットで防災の情報や知識が手に入るから」と高を括っていたのですが…その考えは間違っていたと痛感しました。
なぜなら、災害で電気がとまり電波も使えないような状態になってしまったら、検索もSNSも地図アプリも見られない。そんな状況を、私はこれまでほとんど想像したことがありませんでした。
この度、中央法規出版『だれでも防災 決定版 避難が難しい人のための一冊」(監修:鍵屋一)』 を読む機会があり、そんな“盲点”に気づかされました。
本の紹介というよりは、読んで感じた「自分の備え」の話をしたいと思います。
出勤するか、家族を守るか。災害時に揺れる看護師の立場
「だれでも防災」の構成は、大きく3つにわかれています。
- 防災のための準備
- 被災したときにどう生き残るか
- 生き残った後はどう生活を立て直すか
その他にも、災害知識や防災情報がわかりやすく記載されています。
私は看護師として勤務しており、現在の勤務先も災害拠点病院に指定されています。また、震度5以上の地震災害が発生した際は可能な範囲で病院へ出勤する規則があります。
つまり、災害が起きたときは「自分も家族も被災者でありながら、職務も果たさなければならない」立場です。この現実を考えると、看護師は、その備えを常に整えておかなければなりません。
“完璧な備え”より“続けられる備え”を
ただし、このとき頭をよぎるのは「完璧な防災準備ができるのか?」という疑問です。さまざまな防災グッズや備蓄品、装備があればそれは盤石でしょう。しかし、それがハードルとなり、二の足を踏んでしまっては元も子もありません。
本誌でも“100%の防災はめざさなくてもよい”“かんぺきな防災よりも続けられる防災を”と書かれています。できることを続けてやることが大切なのです。
被災後の心と体を守る知識
看護師として本書を読んだとき、ぜひとも知ってほしい知識が記載されていました。それは身体と心の健康を守るための情報です。
被災した後は自宅や、避難所(または仮設住宅)での生活がはじまります。必要な薬がなくなったり、被災のショックやプライバシーが守られない環境に心を病むこともあります。災害から命を守ることができた後も、この被災後の生活において健康が脅かされ、命をおとす可能性があります。このように“自然災害による直接の被害ではなく、災害後の生活状況の悪化など、間接的な要因によって引き起こされる死を「災害関連死」”といいます。
本書では、感染症や連続した車中泊等に関連したエコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)の予防だけでなく、常用薬をどのように処方してもらうか、限られた環境の中でプライバシーをどのように守るかについても記載されています。
「使わないかもしれない知識」を、あえて持っておく
自然災害はあらかじめ発生が予見できても、それ自体をなくすことはできません。だからいざというときの備えが必要になるわけですが、もしかしたらそれらの知識が生涯使われることがないかもしれません(もしそのようなことがあれば、それはとても幸運なことです。)
「使わないかもしれない知識」を持っていることが、いざというときの心の支えになるのだと思います。
“まずはこれだけ”と最低限読むと良いページが示されていたり、“次に読むべきは”と避難が難しい要配慮者別に参考ページがまとめられていたり、それを支援する人たちへも読むべきページが示されています。どこを読んだらよいか明確に示されているため、とても読みやすく、必要な情報を素早く入手できます。
手に取る理由は「安心したいから」でいい
私たち医療者はときに「災害派遣」として被災地に赴くことになります。その際に準備しておくべき知識や対応も詰め込まれており、被災者にとっても支援者にとってもまさに「決定版」と言えます。この本を読んで、私は“防災”を少し身近な言葉として感じられるようになりました。
ご自宅に一冊備えたり、病棟の本棚や外来待合室の読み物としても揃えておくだけで、安心がひとつ増える気がします。
▼紹介した本
「だれでも防災: 決定版 避難が難しい人のための一冊」
鍵屋 一 【監修】(中央法規出版)
編集:白石弓夏
Nurse Life Mix 編集部です。「ライフスタイル」「キャリア」「ファッション」「勉強」「豆知識」など、ナースの人生をとりまくさまざまなトピックスをミックスさせて、今と未来がもっと楽しくなる情報を発信します。






















