#02 救命救急センター看護師・ゆめさんの場合【第2話】

公開:2024.06.07

わたしたちナースには、あの時に出会った患者さん、そのご家族について忘れられないことがある。
迷い、不安、いろんなものを抱えながらも、自分なりにできる限りのことをした瞬間だった。

特集「あの日、わたしはナースとして」では、実際にあったそんなエピソードを描き、今この日々を頑張るすべての看護師の方に悩んでいるのは一人じゃないということを伝えていきたいと思います。

第2回はゆめさんが、救命救急センターで看護師として働いていた時に体験したエピソードです。

入院前の楽しかった日々

Aさんのこれからの目標を考える上で、Aさんの入院前の姿を想像した。

Aさんが、自身のSNSの投稿を見せてくれたことがあった。そこには、おしゃれな食べ物とAさんが仲の良い仲間と撮った写真で溢れていた。Aさんの趣味は、お酒を飲んだり、美味しいものを食べたりすることであった。

普段のAさんの姿から、気管切開、人工呼吸器が繋がれ苦しそうな表情をする姿に変わってしまったのだ。

この人は強いから大丈夫と信じて

Aさんの妻は、そんな夫を優しく見守る穏やかな人だった。

治療方針に対しても、本人の意向を尊重し「この人は強いから、大丈夫よ。心配だけど、頑張ってるのを応援するしかない。」と言っていた。

Aさんらしい、素敵な目標

きっとAさんは、なぜ自分がこんな苦しい思いをしなければならないのかと、辛くてたまらなかったと思う。

私はAさんと向き合う時間を作った。

Aさんに目標を聞くと「お酒を飲めるようになる」と伝えてくれて、Aさんらしい目標だと思った。

Aさんと私たち医療スタッフの目標が決まった。私たちは全力でサポートすることにした。

文:ゆめ
イラスト:せきやよい
あき あき

急性・重症患者看護専門看護師
家族ケアと終末期ケア、意思決定支援、倫理調整を専門に「最期までその人らしく」過ごせる支援を心がけている。

せきやよい せきやよい

ストーリーを感じられる人物描写や日常に寄り添うあたたかみのあるイラストを制作。挿絵、広告、ループアニメーションからMV制作など幅広く活動。

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