「あの人はなぜ文句を言ったのか?」パーソナリティ心理学の本を読んで考えた。

公開:2025.08.04

「あの人はなぜ文句を言ったのか?」パーソナリティ心理学の本を読んで考えた。
本好きの現役ナースたちが集まるプロジェクト「#看護師さんと本屋さん」のメンバーが、本を読んで考えたアレコレについて共有するコラム「本読んで考えた。」看護の現場での体験や、本を読んで気づいたことなどをリレー形式でご紹介していきます。

今回はパーソナリティ心理学の本を読んで「「あの人はなぜ文句を言ったのか?」をテーマに、雪花さんが考えました。
<今回の「考えた」ひと>
雪花
集中治療界隈の認定看護師。最近大学院の修士課程を修了し、修士号を取得できたおばちゃんです。

「この人の本当の気持ちがわからない」という怖さ

「わかりました、ありがとうございます」と、その場では笑顔でうなずいてくれた。

——それは、認定看護師になって1年目のことだった。

私は、他部署の先輩看護師から患者さんのケアに関して相談をされたため、認定看護師として精一杯の対応をした。少しでも現場がうまく回るように。そう願って、できる限りの配慮をしたつもりだった。

けれど、数日後。別の認定看護師の先輩を通して、その先輩看護師が不満を口にしていたことを知った。そのことを聞いたとき、胸の奥がひやりと冷たくなった。

その場では何も言わず受け止めたふりをして、あとで文句を言う——そんなやり方に私は、怒りというより、「この人の本当の気持ちがわからない」という、怖さのようなものを感じた。

答えの出ないモヤモヤが広がっていった

どうしていいかわからなかった。私は何か間違ったんだろうか。

しかも、その方法は、他の部署ではうまくいったのに…。それとも、今回はどんなに気をつけても、こうなることは避けられなかったのだろうか。答えが出ないまま、モヤモヤした気持ちだけが、じわじわと心に広がった。

 同じ方法であっても、うまくいかないのはなぜだろう。

それは人によるのか、部署によるのか。何を考え、どう行動しているか。相手が持つ考え方や行動パターンを知れば、もっと良い対応ができるのではないか。

そんなことを考えていたときに出会ったのが、『はじめて学ぶ パーソナリティ心理学:個性をめぐる冒険』という本だった。

はじめて学ぶパーソナリティ心理学 個性をめぐる冒険。小塩真司(著)

読んだ本:『はじめて学ぶパーソナリティ心理学―個性をめぐる冒険』小塩 真司(著)/ミネルヴァ書房

人はそれぞれ、違う地図を持っている

“人は、同じ状況に置かれても、異なる反応を示すことがある。それはパーソナリティの個人差によるものである”

という一節に、深くうなずいた。まさに私が感じていて困っていた部分だった。

読み進めていくと、パーソナリティとは、『環境に対する特有の認知の仕方、感情の抱き方、行動傾向のパターンを指す』と定義され、人それぞれが持つ「考え方」「感じ方」「行動パターン」の違いを、教えてくれた。

本書は心理学の専門書だけあって、少しコアな内容も含まれている。文章を読み慣れていない人には難しく感じるかもしれない。

「正しさ」がすれ違いを生むとき

それでもさらに読み進めていくと、性格には主に5つの傾向があるという話にたどり着く。

新しいことが好きか、慎重派か。自分にも他人にも厳しいか。
外向的か内向的か。協調を重んじるか、自分を押し通すか。
不安を感じやすいか、安定しているか。

誰もがこの5つの軸を、それぞれ違うバランスで持っていて、それが「その人らしさ」を形づくっているという考え方だ。この理論を知って、私は自分の対応を振り返った。たとえば、慎重でプライドを大切にする人に対して、ぐいぐい正論で押してしまったらどうなるか。
たとえ内容が正しくても、受け取る側にとっては「攻撃」や「否定」にしか聞こえないかもしれない。
それは、私がまさにやってしまったことだったのかもしれない。

心の中の「くすぶり」に気づくこと

あの先輩は、長年現場を支えてきた人だった。若い認定看護師である私が、改善案を提示したことそのものが、無意識のうちにその人のプライドを傷つけたのかもしれない。

たとえその場では「わかった」と言っても、心の中では違う思いがくすぶっていた。そして、その感情は、じわじわと別の形で表に出たのだ。

相手の「地図」を知らずに同じ道は歩けない

私は、相手を「正しく動かす」ことばかり考えていた。
「この人はどんな世界を生きているんだろう」と、もっと耳を傾けるべきだった。

ただ結果を出すだけでは、誰の心も動かせない。人はそれぞれ、違う地図を持っている。
その地図を理解しないまま、「同じ道を歩こう」と誘うことはできない。

違いを尊重することからチームは始まる

それから私は、助言や指導をする前に、必ず一呼吸置くようにしている。相手がどんな価値観を持ち、どんな言葉なら心に届きやすいか。正しさを声高に叫ぶより、違いを尊重すること。それこそが、パーソナリティ心理学から学んだ、一番大きな気づきだった。

「どうしたらスタッフとうまく立ち回れますか?」

——臨床現場でもSNSでも、認定看護師としてよく受ける質問だ。スタッフ同士の関わりは、難しい。けれど、難しいからこそ、深く向き合う意味がある。違いを知り、敬意を持って接することができたとき、ようやく本当のチームが生まれるのだと思う。

私も失敗に失敗を重ねて、インプットして、ようやく今に至っている。だからこそ、こうして「少し違う視点から見てみる」のも、ありなのかもしれない。

▼紹介した本
『はじめて学ぶパーソナリティ心理学―個性をめぐる冒険』
小塩 真司【著】(ミネルヴァ書房)

文:雪花
編集:白石弓夏
Nurse Life Mix 編集部 Nurse Life Mix 編集部

Nurse Life Mix 編集部です。「ライフスタイル」「キャリア」「ファッション」「勉強」「豆知識」など、ナースの人生をとりまくさまざまなトピックスをミックスさせて、今と未来がもっと楽しくなる情報を発信します。

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