インタビュー#15 東あさか「看護師とモデル、どちらかではなくどちらも自分には必要」

公開:2023.09.01

看護師として働きながら、その知識や経験を生かして新しいビジネスを手がけたり、看護とはまったく別の世界でパラレルキャリアを歩んだり、忙しい看護の仕事をしながらでもプライベートを思いっきり楽しんだり…。ナースとしての新しい生き方をみつけようとしているナースたちの”働き方”や”仕事観”に迫るインタビュー企画。第15 回は看護師でモデルでもある、東あさかさんにインタビューしました!
東(ひがし)あさかさんのプロフィール

小さい頃から芸能活動。看護学生時代はモデルの活動と両立しつつ、看護師国家試験に合格。2023年より“看護師モデル”としてタレント活動中。講談社「ViVi」公認インフルエンサー「ViVi girl」 、フジテレビ「EXITV」出演など

「こんな看護師さんがいるんだ」という体験から

編集部 編集部
本日はよろしくお願いいたします。まず、あさかさんが看護師を目指したきっかけについて教えてください。
東
母が看護師をしています。また、小さいときから「ナースのお仕事」などのドラマも観ていて、なんとなく看護師の仕事は知っていました。

そこから、看護師になろうと目指したのは、高校2年生の冬くらいに進路を決めるタイミングでのことです。

看護師の仕事に興味があることを母に伝えたら、「一回看護体験に行ってみれば」と言われて、先生の勧めもあり、自分で看護師1日体験のチラシやネットでも探して、職場体験に行ったんです。

そこでついてくれた看護師さんが、忙しいなかでも忙しさを見せず、いろんな患者さんのところに行くたびに、患者さんが笑顔になっていて、私から見てもわかるような愛され方をしている姿がとても印象的でした。
「こんな看護師さんがいるんだ」と感動した記憶があります。

それで、私も自分の持ち前の明るさで勇気づけることができるんじゃないかと思い、その職場体験で看護師になろうと決めました。
看護師の母との写真
編集部 編集部
お母さまが看護師なんですね。家で仕事の話はよく聞いていたんでしょうか。
東
母は元々は仕事とプライベートは分けていたと思います。

仕事は仕事でちゃんとやって、家に帰ってきたら仕事のことはしゃべらないというのが、自分のなかの決めごとにしていたみたいです。

だけど、私が国家試験に合格して働き出してから、看護師の仕事のこともいろいろと話すようになりましたね。
編集部 編集部
また、その職場体験で出会った看護師さんというのは、どんな方でしたか。
東
50代くらいのベテランの看護師さんだったと思います。すごく明るくて、その看護師さんはキラキラして見えました。

患者さんのところに行くたびに、どんな患者さんも笑顔になっていて、高校生の私でも見てわかるくらい患者に愛されて、常に感謝されていました。

当時の私は、看護師の仕事って忙しくて、疲れていそうというイメージが強かったんです。

でもその方は苦しい表情を一切見せることなく、どんな時でも患者一人一人に対して接し方を変えながら看護をしていました。こんな看護師さんもいるんだなって衝撃的でしたね。
編集部 編集部
そうして実際に看護学校に入学して、しんどかったことや何かギャップなどはありましたか。
東
看護学生は当たり前に辛いことやしんどいって自分なりに理解して入学したつもりでした。でもイメージを超えていましたね。

勉強も覚える量が多いし、1から新しいことを学ぶわけで、勉強が嫌いだったのもあり、すごく苦しんでいました。

よく再試になって、勉強に対してしんどいことも多かったんですけど、面白いなと思ったことはとことん調べることもあって、感染症とか興味のある教科は積極的に先生に質問していくようなこともありました。

後はとにかく実習の記録が大嫌いでした。苦手で記録できない自分にイライラしたり、泣いた事もありました。
編集部 編集部
その苦しい、しんどい気持ちはどうやって乗り越えていったんでしょうか。
東
とにかく“自分に負けない“と常に言い聞かせていました。

わからないことは友達と一緒に考えたり、自分で調べたりして。

あと、朝の通学1時間ぐらいの時間が頭に入りやすい勉強できる時間帯だと気づいて、その短くもなく、長くもなくちょうどいい時間を使って、うまく勉強していました。
看護学生時代の東さん
編集部 編集部
学生時代はモデルの仕事もされていましたよね。実際にどのような生活を送っていたのでしょうか。
東
忙しいときは、朝9時から16時の4限まで授業を受けて、1時間で移動してメイクもやってもらって、17時から21時くらいまで撮影をするという生活が1週間に2~3回ありました。

授業が3~4限からのときは、朝撮影をして学校に行くこともありました。元々忙しいのが好きだったんですけど、さすがに自分でも体力的にきついなと思いましたね。

だけど、学業優先にしていたので、特に休めない実習のタイミングでは撮影はお断りしていたときもありました。

国家試験が近づいた時には移動時間も合間の休憩も試験勉強にあてていましたね。

看護師の仕事とモデルの仕事

編集部 編集部
それから今看護師となられて、どのように働いているのでしょうか。
東
現在は整形外科の病院で非常勤として外来で働いています。月に11~14回は出勤するという形である程度自由度がある契約をしていて。

特に曜日固定とかではないのですが、モデルの仕事のスケジュールをみながら、仕事に入れるときには入っています。
編集部 編集部
外来の仕事はどうですか。ギャップや何か大変なことなどはありますか。
東
新卒で外来看護師として働くのはレアかもしれません。普通は病棟で働いてから外来に異動する方が多いから。

実習では病棟しか経験がなかったので、外来の仕事は自分のなかではあまり想像できていなかったのもありますが、外来の仕事も病棟とは違う忙しさがありますね。

医師と関わることも多いので、診察に入ったり、処置に入ったり、採血もしたり、また救急で患者さんが来れば入院対応に入ることもあって、書類の説明もして、わりとなんでもやっています
編集部 編集部
モデルの仕事はどのようなきっかけではじめることになったのでしょうか。
東
うちは3姉妹で、真ん中の姉が新聞に入っていたオーディションのチラシを見て受けたいとなって、「あさかも受ければ」と母に言われて一緒に受けたら受かって、2人でレッスンに通ったのがきっかけです。

それが9歳の頃の話です。レッスンも楽しくて、モデルや女優さんってこんな感じなんだと、私もそうなりたいなと思い、いろいろとオーディションを調べて受けたりしていました。

その頃から、モデルの仕事だけではなく、バラエティやドラマとかにも出られるようなタレントになりたいなと思っていました。

それから、大きな活動の転機となったのが高校3年生の4月に受けた雑誌ViViのオーディションで、セミファイナリストまで残ったことです。

結局最終選考では落ちてしまったんですけど、その後にViViのインフルエンサーモデル「ViVigirl」というものに声をかけていただき、芸能の仕事として夢に一歩近づいたというのはあります。
編集部 編集部
現在のモデルとしての活動はどのようなものがあるのでしょうか。
東
現在はウェディングや浴衣の撮影やカタログモデルなどの仕事が多いですね。

他にもバラエティでフジテレビの「EXITV」に出演させていただいたり、最近はじまったオーディション番組ではMCを担当したりしています。
フジテレビ「EXITV」に出演中

看護師とモデルの両立で得られたもの

編集部 編集部
あさかさんの場合には、学生の頃からモデルの仕事を両立されてきたと思いますが、看護師になってからも両立ってできるものなんでしょうか。
とてもお忙しそうですが。
東
なんだかんだ両立できています。

看護師の仕事との両立はまだはじまったばかりですが、とにかく見て覚えて、仕事が終わったら毎日勉強みたいな感じですね。

わからないことがあったらすぐ調べる、直接聞くとやっていくうちに失敗ももちろんあって、また自分でも振り返って、次にはこうしようとまたやる前に確認していくことを繰り返しています。

医師の話もちゃんと聞いていないと、患者さんから質問されたときに答えられないですから。

医師が説明していた内容も理解しなければならないので、わからないことは付箋にメモしてあとで確認したりしています。

最初の1か月は先輩についてまわっていましたが、2か月目からはひとりでやることもどんどん増えてきていますね。
編集部 編集部
すごいですね、もうそこまで考えて実践されていると。
東
まだまだと思いながらも、頑張っています。

迷惑かけないようにちゃんとしたいという気持ちが強いので、忙しい先輩になるべく迷惑はかけないように、自分なりにできることはやって、できないところを確認してと意識していますね。

仕事に関しては「どちらかに絞らないの?」と、ファンのみなさんや他の方からみるとそう思われることもあるかもしれません。

だけど、看護学生のときに自分にとってどちらが大事なんだろうと、何が得られたんだろうと考えましたが、どちらかではなくて、どちらも自分のなかでは必要だという考えに行きつきました。

学生をしながらいろんな芸能の仕事もしてきて、そのときの出会いでいい刺激をもらって、自分の気持ちが支えられてきていると実感しているので。
編集部 編集部
いい刺激とはたとえばどんなことがありますか。
東
たとえば、EXITさんと共演して学んだことがあって。

ひとつは、私のようにバラエティの経験が浅い人に対しても、嫌な顔ひとつ見せなくて、私に対しても丁寧に挨拶してくれて笑顔で接してくれる、細かなところもフォローしてくれて、安心して仕事に取り組むことができています。

また、バラエティはアドリブ的な要素が多いのかなと思っていたんですが、そのなかでもお2人はしっかりと準備されてきていることを知ったときは驚きました。

共演する人たちがどういう人なのか調べてきて、台本もきっちり読み込んでいて。
そうした番組を作っていく姿勢をみて、だからお2人はこうしていろんな仕事でも起用されているんだなと思いました。

これまで看護と芸能の仕事は、まったく違う世界だと思っていたんですけど、自分のなかで2つの仕事が繋がったんですよね。

看護師でも、はじめて会う患者さんに対する姿勢と、芸能の仕事でもはじめての共演者さんや視聴者さんに対する姿勢と、相手を知ろうとすること、人を笑顔にすること、そのために準備することなど、いろいろな共通点があると思いました。
編集部 編集部
今までのお話を聞いていて、看護師になろうと思ったきっかけの看護師さんとの話とも繋がると思いました。しかも、それを自覚されているんですね。
東
そうですね。
いろんな仕事が繋がるなと思うことがあります。だから、なおさら両方頑張ろうと思っています。

パラレルキャリアとしてたくさん学び、チャレンジし続けていく

編集部 編集部
あさかさんが今後チャレンジしたいこと、目指していることはなんでしょうか。
東
看護師とモデル、パラレルキャリアとしてさまざまなことにチャレンジしていきたいですね。
看護師の仕事もモデルの仕事もたくさん学ばなきゃいけないことがあるので。

先輩看護師さんをみていると、仕事の優先順位もそうですし、患者さんが納得して治療を受けるための支援は勉強になることばかりだと思いますし…。

モデルの仕事でも商品をよく魅せるために自分ができること、商品を前にそれでも自分らしさを魅せていくには何ができるだろうと考えています。

上には上がいますけど、どちらも並行して頑張っていきたいですね。

例えば看護師とモデルを頑張る「看護師モデル」のようなタレントとして、女性が憧れる存在になりたい。

どちらも両立するのは難しいと思われているかもしれないけど、両立できるというのを、自ら発信していきたいですね。
現在はモデルをしながら看護師としても活躍
編集部 編集部
それでは、最後に読者へメッセージをお願いします。
東
私は看護学生の底辺でした。
勉強が嫌いで成績も悪く、模試試験なんか学年最下位。
それでも自分に負けず勉強を頑張って、看護師の資格をとることができました。

最終学年の秋口くらいからは友達とも遊ばず、芸能の仕事もセーブして、補習を受けながら塾にも行って、インスタのライブで国試の授業を受けたりして、起きている時間はほぼ勉強していました。

そんな時、芸能の仕事は気持ちのバランスとなり、支えにもなりました。
ときには厳しく、自分を信じて勉強した積み重ねが自信にも繋がったんだと思います。

こんな私だからこそ、看護師とモデルを両立する姿を看護学生さんや新人看護師さんに向けて伝えていきたいです。

聞き手・ライター:白石弓夏


看護師兼ライター。小児科や整形外科病棟で10年以上勤務。転職の合間に派遣でクリニックやツアーナース、健診、保育園などさまざまな場所での看護経験もあり。現在は非常勤として整形外科病棟で働きながらライターとして活動して5年以上経つ。
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