看護学校と家庭の両立に苦戦する
公開:2023.09.13
クラスで一番時間がない人
クラスメイトでママ学生は3人でしたが、それぞれ置かれている環境は違っていました。親や誰かに頼らずに自分世帯だけで学生生活と家庭を両立しているのは私だけでした。義理の両親と同居しているママ学生さん、両親と同居しているママ学生さん、そして私。両親と同居しているママは、お子さんを両親にお願いできる環境にあるため、放課後残って勉強したり、自由が比較的利いていたように私には見えました。
私は夫と協力して小学生と中学生の3人の子供達の事もしつつ、クラスメイトと同じ量の課題や練習をこなさなければいけませんでしたから、「時間なかった」とクラスメイトが言う言葉に内心「私が一番時間ないし!」って思ったりしていました。
子供たちとの時間の捻出も一苦労
これまで、子供達が家に帰る時間には家にいるという生活スタイルで過ごしていましたので、子供達も帰ったらママがいないという気持ちになったと思います。私自身も、子供達の帰宅時に家にいてあげられない事がとても気がかりでした。
学校の授業は16時半までで、シーツ交換や洗髪、清拭などの看護技術の練習もあればさらに帰宅は遅くなりますから、「おかえり」が言えない状況は仕方がないのですが、どうしてもそのことが気にかかって、子供達に申し訳なさを感じてしまっていました。1分でも早く家に着くようにと、授業後すぐに乗れる電車に飛び乗って帰っていましたし、朝も、子供達の登校を見届けてから出れる時間の電車に乗るように時間調整をしていました。
授業が少しでも早く終わったり、4コマ目が休講になったりすると、友達から、「お茶して帰らない?」とお誘いを受ける事もあったのですが、「おかえりって言いたいからごめん。」と愛想のない返事をして帰宅していました。子供達より先に帰宅して「おかえり」を言える日は数えるほどしかなくて、大半は急いで帰っても17時半前くらいになっていました。
子供達より少し遅く帰宅しますが、ちょうどおやつを食べている時や、ちょうど宿題が終わった時というタイミングで帰宅出来ていました。子供達の話を聞く時間を大切にしながら、家庭訪問、個人懇談等があれば出来る限り対応していました。
家事をいつやれって言うの?
月曜から金曜日までは朝から夕方まで授業です。時々放課後に技術練習で残って、家に帰ってからは課題もありました。「家事をいつやればいいの?」ではおさまらず、「家事をいつやれって言うねん、ほんまに~」って逆切れ状態でした。
入学前に、イメージしていたよりも実際ははるかに両立は大変なことでした。イメージしていたようにうまくいきません。事前に献立を考え、買い出しリストを書いて、土曜日に1週間分の食料の買い出しに行って、その日の午後に「作り置き大会(のちに大会と呼ばれるようになる)」と題した作り置きを、子供を強制参加させて、1週間分の夜ご飯を作りました。
ママと一緒にお料理が出来ると、最初は喜んで参加してくれていた子供達も、1年、2年と経過し「大会するよ~」って言っても集まらなくなった日もありました。でも、これが平日の自分を助けるんだと、週末1日使ってでも、沢山のタッパーへ料理の作り置きをして、3日以内に食べるなら冷蔵庫、それ以外は冷凍庫へ入れていました。
これによって平日帰宅後、課題をやっても、チンして盛り付けるだけで夜ご飯が出来るので、お味噌汁を作るだけで済んで助かっていました。掃除は週末、水回りのお風呂掃除とトイレ掃除は登校前に毎日やるというのがルーティンになりました。洗濯は前日に1回、朝1回まわして、取り込んでたたむのは家族に協力してもらっていました。
ついに買ってしまったコロッケ
クラスメイトにストイック過ぎると言われる事もあるくらい、私はストイックに学生生活をこなしていたかもしれません。戦時中のスローガンに「欲しがりません勝つまでは」という有名な言葉がありますが、「お惣菜絶対買いません、実習の時までは」と真似して、自分の中で、どんなに疲れていても、どんなにしんどくても、お惣菜を買わない宣言をしていました。
そんなある日、どうしても、しんどくて、チンして盛り付けるだけの夜ご飯が用意されている事を知っていたけれど、それすらやる気が起きなかった私は、疲れて、学校帰りにスーパーでコロッケを買って帰りました。
それがどうしても私の中で許せなくて、家族に申し訳なくて、食卓に出して「ごめん、今日コロッケ買ってしまった。実習までは買わないっていったのに」って言いながら泣いてしまいました。
その時中学生だった長女が冷静に「コロッケいいやん!たまにはお惣菜嬉しい。コロッケを買った事よりさ、せっかく買ってきてくれたのに、そうやって泣いてる方が嫌やわ」って言われました。はっと我に返り、確かに、コロッケ買ってきて食卓で泣いてる母親ってどうなんだって。ごめんごめんって言って泣くのをやめて食べました。
翌日学校で「昨日さあ、コロッケ買っちゃって、泣いたら娘にこんなこと言われて・・・」って話をお昼ご飯を食べながらクラスメイトにしたら、「よくできた娘さんやな」って褒めてくれました。コロッケを買った事にも正直驚いていましたが(絶対買わない実習までは!って意気込んで頑張ってきていたので)、コロッケ買う事に何が悪いのかさっぱりわからないって言われて、親が泣いてる方が子供としたら嫌に決まってると言われて、やっぱりねって笑ったのを覚えています。
でも、コロッケを買って泣くくらい、当時の私は、完璧な母親と看護学生をこなさなければと、入学してから張りつめていたのかもしれません。
リビングで子供たちと一緒に宿題をする
平日は子供達の宿題をする時間には、帰宅が間に合わない事が多かったのですが、週末は、子供達がリビングで宿題や勉強をする際に、私も一緒に広げて勉強をしていました。
それは3年生の国家試験前まで続き、リビングでママも一緒に勉強をするという光景が子供達にとっては当たり前の光景になっていました。なかなか子供たちと一緒に母親も課題をやるという機会はどこの家庭でもあることではないですし、とてもいい経験をしていたと思います。
学生と家庭の両立にも慣れてきて
慣れるまでは本当に大変だった家庭との両立の学生生活でしたが、平日は学校に行って、夜ご飯はチンして盛り付けて子供たちと一緒に食卓を囲み、週末は買い出しに行って一緒に作り置きをするという生活に慣れてきました。
1年生の1学期が終わるくらい、夏休みに入る前くらいには、すっかりこの生活に慣れてきて、腹をある意味くくって、35歳で主婦で母親の私が学生生活を送っている状況を俯瞰してみる事が出来るようになり、楽しめる一歩手前までたどり着いていました。