3年間同じ病院で働き続けた方がいい?
公開:2023.09.13
今日から連載企画「看護師四季のナース手帖」が始まります。ここでは、看護師のみなさんからよくいただく質問や相談にお答えしていきます。みなさんの悩みを和らげるヒントとなると嬉しいです。
今回は記念すべき第1回目ということで、新人看護師さんから特によく聞かれる「三年間同じ病院で働き続けた方がいい?」というご相談にお答えしたいと思います。
石の上にも三年?
「同じ病院で三年間働いた方がいい」という言葉はとても聞く機会が多いですよね。私が印象深かったのは、新人看護師のときに師長さんから言われたことわざです。面談で悩みを伝えたところ、「石の上にも三年だよ、とにかく三年頑張ってみよう」と言われました。石の上にも三年とは、どんなに辛くとも辛抱していれば必ず成功するという意味を持ちます。その言葉を聞いて、当時は「何が何でも三年間は頑張らなきゃいけないんだ」と思い詰めてしまった記憶があります。
一番大事なのは「自分の心」
しかし、看護師を長年続けてきて気づいたことがあります。それは「三年間にこだわる必要はない」ということです。もし「辞めたいな」と思ったら、辞めちゃっていいと思います。「え!?軽くない?そんなんでいいの」と思ったかもしれませんね。でも、いいんです。「辞めたい」という気持ちはネガティブなものではなく、心が疲れているサイン。自分の心と向き合うことは、とても大切です。無理に自分の気持ちを抑えて過ごしてしまうと、とても辛い日々を送らないといけなくなってしまいます。無理は禁物です。悩んだときこそ、自分の心の声に耳を澄ませてみてくださいね。
自己分析のススメ
迷ったときは、自己分析をすることをおすすめします。自分の想いを書き出すことで、「三年頑張ってみる」もしくは「新たな道を探す」と判断するきっかけになりますよ。思いつくままに「辛いな」「納得できないな」と感じることや、「これは好き」「これをやってみたい」といった気持ちを率直に記してみてください。そうすることで、自分がどう行動したいが見えてきます。将来的に同じ場所で働いていた方が実現できそうか、それとも他の場所の方が新たな可能性が広がるか、自分の納得できる道がみつかると良いですね。
「辞めたいな」と思う原因は、そこの病棟と合わないということもあるかもしれません。病棟ごとに雰囲気って本当に多種多様です。診療科によって1日のスケジュールは大きく異なりますし、忙しさの種類も違います。人間関係も雰囲気も、その病棟特有のものがあります。なので、働く場所を変えたら働きやすくなるということもあるのです。
私が驚いた病院の違い
私が印象的だった病院の違いをご紹介しますね。以前の病院は、より長時間仕事をしている方が頑張っているねという雰囲気だったんです。だから、早く仕事が終わったとしても、なんとなく帰りづらい…そのため帰宅時間はいつも遅くて寝るだけという生活でした。ただその当時は看護師のお仕事ってこんなものなのかなと諦めていたんです。
でも、新しく就職した職場は全然違いました。どのスタッフも定時には帰りたいというスタイル。もし仕事が長引きそうであれば、「何が終わってない?」と周りのみんなが手伝ってくれるので、協力して定時に終わらせるという仕事の進め方が私にとっては心地が良かったんです。もちろん緊急入院を対応するため、どうしても残業が避けられない場合もありますが、仕事が終わったらプライベートな時間を確保できるということは心の余裕にもつながりました。
このように同じ看護のお仕事でも環境は全然違うので、「今の場所が辛いな」と思ったら新しい環境を求めて旅立つということも一つの手です。
三年間続けるメリットはあるの?
では、なぜ一般的に同じ病院で三年間働かなければならないと言われているのでしょうか。実はこれは病院にかぎらず、どの業界でも言われているのです。調べた結果、三年というのが、技術や知識が定着する一つの目安になっているようです。そのため、就職の条件が「看護師経験三年以上」となっている病院が少なからずあります。なので、就職の幅が広がるという視点では、三年は一つの目安になるのかなという印象はあります。もし気になる病院があったら勤務年数が条件に入っているかどうか調べてみてくださいね。
「自分のタイミング」で選択しよう
「三年間は同じ病院で働いた方がいい」と何度も聞くと、ついその考えに縛られてしまい、三年間働かなければならないという呪縛に感じることがあるかもしれません。もちろん同じ病院で続けることで得られるものもあるとは思います。しかし、良し悪しは人それぞれなので、絶対同じ病院で働いた方がいいということも、絶対転職したほうがよいということもありません。
最も大切にしてほしいのは、自分の心と向き合うことです。より自分に合った場所の方が、心にも優しいと思うのです。お仕事は時には頑張ることも求められますが、毎日無理して過ごすと限界が来てしまいます。だからこそ、同じ病院に三年間と固執するのではなく、自分自身のタイミングで選択することが重要です。
みなさんが納得した道を歩めるよう応援しておりますよ。
東北大学医学部保健学科看護学専攻を卒業後、同大学の大学院医学系研究科を修了。看護師、保健師。看護師として病院に勤務しながら、看護師YouTuberとして新人看護師や看護学生を対象とした看護の勉強に役立つ動画などを配信。YouTube登録者数は11万人を超え、動画の再生回数は5,000万回を超える。わかりやすく、視聴者のためになる配信は人気があり、SNSの総フォロワーは約17万人。著書に「看護師1年目の教科書(KADOKAWA)」。MENSA会員。