#04 誰も答えてくれなかった。「文献ってネットで調べれば良くない?」問題

公開:2023.11.10

文献ってネットで調べれば良くない?問題
ハルジローのオンライン看護学院の連載企画「病棟研究はじめの一歩」では、看護師&医学博士&研究者ならではの視点で、看護の仕事に役立つ知識やテクニックを紹介していきます。

今回のテーマは、「文献ってネットで調べれば良くない?」問題について。

日々だれもが使うネット検索。看護の臨床において、何かの文献を調べたい時での活用としては、最適なのでしょうか。

検索のメリットとデメリット、検索以外の文献の調べ方について今回は解説します。

検索エンジンのメリットデメリットとは何か?

検索のメリット・デメリット

日頃行う検索。それは検索エンジンで行っています。検索エンジンとは世界中のウェブページをロボットが自動的に登録しデータベース化しているものです。つまり、検索エンジンは、ロボットによって自動でデータベースにされているもののことを指します。

それでは検索エンジンのメリットデメリットとは何でしょうか?

検索エンジンのメリットは、すぐに多くの情報にアクセスできることです。そしてデメリットは、正しい情報か判断して登録されているわけではないことです。

例えば、コロナ感染症蔓延初期の頃に、ネットの情報でマスクとティッシュが同じ原料を使用してるという話が出ました。これによって実際にティッシュの買い占めが生じ、全国でティッシュ不足が起きた事は皆さんも覚えているかと思います。

しかし、実際はこの情報は間違いであり、製造元の日本家庭紙工業会からこの情報はデマであるとお知らせがされました。しかしながら、この情報を鵜呑みにすると言うことで、実際に全国のティッシュの買い占めが生じたと言うのは事実です。

看護の臨床で起きてはいけない”検索のデメリット”。じゃあどうする?

ウェブサイトで〇〇と言うケアが良いと書いてあった。なので〇〇と言うケアを実際に行った結果、患者さんの状態が悪化したということも考えられます。

コロナ禍での事例から考えると、信用できる情報にアクセスできると言う事はなかなか難しいことです。

検索エンジンに関しては、多くの情報が手に入る反面、正しい情報か判断すると言うことに対しては一つ一つ情報を吟味する必要があるため、 本当に正しい情報を得ようと思ったときには逆に非効率になる場合があります。

そこで、既に情報が吟味されたデータベースが必要になってきます。

文献検索データベースとは対象となるデータが、製作者の意図を持って、集められたもののことを指します。既に、製作者の意図によって情報が集められているため、自動的に集められた検索エンジンよりも信ぴょう性は格段に上がります。

検索より文献データベースを活用しよう

こちらに看護分野で役立つデータベースに関して記載してみました。それぞれ説明していきます。

看護分野で役立つデータベース

国内編

看護分野で役立つデータベース

まずは医学中央雑誌です。特定非営利活動法人医学中央雑誌館公開(略称:医中誌)作成運営する国内医学論文情報のインターネット検索サービスです。看護だけでない医療系の文献が多く集まっています。

続いてCiNii Researchと言うデータベースもあります。
国立情報学研究所が提供しているデータベース。研究データやプロジェクト情報等研究活動大学研究紀要などが検索可能なデータベースです。

国外編

看護分野で役立つデータベース

英語文献のデータベースでは、CINAHL(シナール)というものがあります。CINAHLは看護分野の学術誌、出版物を検索できます。全米看護連盟と全米看護協会が発行するすべての看護系雑誌と出版物が収録されています。このあと説明するPubmedよりも、看護の詳細な文献が登録されています。

続いて、Pubmedはアメリカ国立医学図書館が提供している医学、歯学、薬学、介護、ヘルスケア、生物学などの広範囲の分野を取り扱っている文献データベースです。

そしてこちらはPubmedとも似ていますが、Embaseと言う文献検索データベースです。Embaseは1947年から現在までの生物、医学、薬学に関する文献を網羅している生物医学データベースです。

続いてコクランライブラリーを紹介します。コクランライブラリーはイギリスに本部を置くコクランと言う非営利団体が、各種疾患を対象とした治療や診断についてのシステマティックレビューが収録されています。

文献データベースまとめ

いろいろなデータベースを紹介して混乱するかと思いますが、主な内容でまとめますとこのような形になります。

文献データベースまとめ

日本語文献、英語文献ともに広範囲の分野を対象としたデータベース。または看護学に特化したデータベース。または、システマティックレビュー系統レビューというものに特化したデータベースなど、それぞれのデータベースに強みがあるということを理解して使い分けましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?ネット検索で情報を探すというのは、便利な反面、リスクも大きいものです。一方で、文献や文献データベースと言われると何をどうしてよいか、どう使い分けてよいかわからない方も多かったと思います。ぜひ今回の記事を参考にして、気になることを文献データベースを使って調べてみる一歩を踏み出していただければと思います。

企画・監修:ハルジローのオンライン看護学院
イラスト:YUI
ハルジロー ハルジロー

集中治療領域で看護師として働きながら、博士課程修了(救急・集中治療医学専攻)。Youtube/Instagram/TikTokで教育コンテンツを配信中。
クラウドファンディングで作成した著書は達成率1458%(1,458,600円)となり看護学部門でAmazonベストセラーランキング1位を獲得。
研究者としても多くの英論文を発表している。

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