#07 通販サイトのレビューと同じ!?Impact Factorを知って良い論文を見つけよう!

公開:2024.01.31

ハルジローのオンライン看護学院の連載企画「病棟研究はじめの一歩」では、看護師&医学博士&研究者ならではの視点で、看護の仕事に役立つ知識やテクニックを紹介していきます。

今回のテーマは、「通販サイトのレビューと同じ!?Impact Factorを知って良い論文を見つけよう!」についてご紹介!

最近、お肌に悩んでいます。30代半ば……。冬の季節のお肌の悩みが増えてきました。いろいろな美容方法がある中で「うるおい」を維持したいと考えパックを検討しました。しかしお風呂上がりのパックの購入を周りに相談するのは少し躊躇するお年頃(30代半ばのおっさん)。

とりあえずWebサイトで「おすすめのパックまとめ」を見ますが、これ本当に効果あるのかな?と疑ってなかなか一歩踏み出せません。なので、とりあえず通販サイトレビューをみて一番評価が良いものを購入しました。さすが皆が「星」をつけるだけあって非常に満足しています。
このような経験、皆さんもありませんか?同じことは論文でもおこります。

前回の「論文の世界への旅は、どこから巡る?」読んで「とりあえずレビュー論文を読んだ方が良いんだ!」と理解した方もいらっしゃるかと思います。しかし同じようなレビュー論文があり、どれをよんだらいいか分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。通販サイトのレビューのように、みんなの評価が知りたい!そこで登場するのが「Impact Factor」です。

Impact Factor(インパクトファクター)とは?

Impact Factorは、学術雑誌(Journal)の影響力を測る指標の一つです。そのJournalに掲載された論文がどのくらい引用されたかを示します。論文それぞれではなく、その論文が掲載されているJournalの影響力を評価しています。ちなみに計算方法は下記のとおりです(計算苦手な人は飛ばしてOK)。

Impact Factor= 同じ2年間にそのJournalに掲載された論文数÷特定の2年間にそのJournalに掲載された論文が受けた引用数
※上記は2年間のImpact Factorです。3-5年など期間が変わる場合もあります。

​例えば、2023年のImpact Factorを計算する場合、2021年と2022年にそのJournalに掲載された論文が2023年にどれだけ引用されたかを調べます。そして、その引用数を2021年と2022年に掲載された論文数で割ることでImpact Factorが算出されます。

何年間の引用数で区切るか、計算方法などは若干ちがいますが、最も有名で広く利用されているのは、「Journal Citation Reports」(JCR)のImpact Factorです。

つまり、多くの「いいね」を集めた論文

Impact Factorの値が高いほど「自分の論文でも引用しよう!」と多くの人が思った証拠です。つまり多くの「いいね」を集めたということです。通販サイトで商品を買おうとした時、みなさんはレビューをチェックしますよね?レビューの数が多く、星の数が多い商品は人気があると感じることでしょう。

この「レビューの数」と「星の数」が、論文の「引用数」や「Impact Factor」と似ていると考えてください。レビューが多く、評価が高い商品は、多くの人が使って満足している証拠です。同じように、引用数が多く、Impact Factorが高いJournalの論文は、多くの研究者が読み、その研究を基にして新しい研究を進めているという証拠になります。つまり良いJournalの指標として使われます。

代表的なJournalのImpact Factor

『The Lancet』 – エルゼビア発行 (IF=168.9)
『New England Journal of Medicine』 – 米国マサチューセッツ内科外科学会が発行(IF=158.5)
『JAMA (Journal of the American Medical Association) 』 – 米国医師会が発行(IF=120.7)
『BMJ (British Medical Journal)』 – 英国医師会が発行(IF=105.7)
『Annals of Internal Medicine』 – 米国内科学会が発行(IF=39.2)

上記は医療系の中でもっとも影響力のあるJournalの代表です。多くの疾患(循環器、脳、呼吸器など)、分野(医療、看護、薬、リハビリなど)の世界のトップクラスの論文が集まる傾向にあります。Impact Factorが高いJournalほど、厳密な審査が行われ、投稿することは難しいです。そのためこれらのJournalに掲載されることは研究者のステータスの一つです。このあとに各専門分野のJournalが続きます。アメリカやヨーロッパの看護師の研究者をみると、物凄く良い論文が作成できればまずは上記5大Journal、専門領域の中で高いImpact FactorのあるJournalを目指す傾向が私の専門の集中治療系ではあるように思います。

※JCRのサイトからImpact Factorを確認するには費用がかかります。そのため契約しているサイトなどを大学の図書館などで確認する必要があります。少し手間なので、Journalごとのホームページで「Journal名+Impact factor 2023」などと検索することで確認できるかと思います。

Impact Factorの注意点

通販サイトでのお買い物で注意が必要なのは、レビューが多いからといって必ずしも全ての人に良い商品とは限らないということです。僕らが看護師さん向けに出版した本は、呪術廻戦に比べるとレビュー数は少ないですが、看護・医療の勉強をしたい人には呪術廻戦よりもためになります!同様に、Impact Factorが高いからといって、その論文が必ずしも優れているとは限りません。

先程の式で示した通り、引用数が多い方がJournalのImpact Factorは上昇します。そのため、専門分野の論文の方が読む人・引用される機会が限られるためImpact Factorが低下する傾向があります。そのためImpact Factorは一つの指標になりますが、それだけで論文の価値は決まることにはなりません。その点は注意しましょう。

領域にもよりますが、Impact Factorが1〜2以上あればある程度しっかりしたJournalかと思います。中にはImpact FactorがついてないJournalも存在します。投稿すれば基本的に採用される営利目的のハゲタカジャーナルなどもあるので注意しましょう(論文を投稿する際に投稿費用を1000~5000$程度かかる場合もあります。円安が厳しい!なのでジャーナルは採用すれば採用するだけ、お金もうけができる側面もあります。途上国の研究に対しては安くなる傾向があります)。

通販サイトで商品を選ぶ時にレビューだけでなく商品の詳細を確認するように、論文を選ぶ時もImpact Factorだけでなく、論文の内容や著者の信頼性などもしっかりと確認することが重要です。

まとめ

Impact Factorは論文の影響力を測る一つの指標であり、高ければ高いほどその研究が注目され、引用される可能性が高くなります。この論文は良い論文なの?と分からない人は参考にしましょう。しかし、それだけで全てを判断するのではなく、論文の内容や著者をしっかりとチェックすることが大切です。

企画・監修:ハルジローのオンライン看護学院
イラスト:YUI
ハルジロー ハルジロー

集中治療領域で看護師として働きながら、博士課程修了(救急・集中治療医学専攻)。Youtube/Instagram/TikTokで教育コンテンツを配信中。
クラウドファンディングで作成した著書は達成率1458%(1,458,600円)となり看護学部門でAmazonベストセラーランキング1位を獲得。
研究者としても多くの英論文を発表している。

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