#11 論文探しを頼める猫型ロボットは実在するか?

公開:2024.05.17

ハルジローのオンライン看護学院の連載企画「病棟研究はじめの一歩」では、看護師&医学博士&研究者ならではの視点で、看護の仕事に役立つ知識やテクニックを紹介していきます。

今回のテーマは「論文探しを頼める猫型ロボットは実在するか?」について。

読みたい論文、見つからない問題

皆さんはここまでで①論文の読み方②研究の構造③英語論文の読み方などを学んできました。また、どんな論文を読めばいいか、論文の種類(レビュー記事やRCT)、インパクトファクターについて学びました。さらに、英語が苦手という人のために、「英語アレルギー」を克服するためにAIツールを活用した英語論文の読み方について解説しました。

これらの情報をもとに、「よし、読もう!」と思い、#04 誰も答えてくれなかった「文献ってネットで調べればいいの?」問題で紹介された「PubMed」から、英語を使って論文を探し始めようと思ったあなたはとても素晴らしいです。しかし、探し始めると、なかなか自分の知りたい論文が見つからないことがあります。目の前に何千、何万と論文が検索されているにも関わらず、どれが良いのか分からない。探すのに疲れたあなたは、適当に論文を選んで読み始めるでしょう。しかし、選んだ論文に自分が知りたかった情報が含まれていないことに落胆することもあるでしょう。繰り返し異なるワードで検索し、30-50本程度の論文に絞り、アブストラクトをざっと読みながら適切な論文を探す中で、検索力や英語力が身につくのは確かですが、初めての人にはハードルが高いことも事実です。

今回は、最初の論文探しのハードルを下げるために、AIを活用した論文検索方法を紹介したいと思います。

論文はなぜ難しいのか

何千、何万もの論文が指先一つで検索可能な現代でも、目当ての研究を見つけ出すことは容易ではありません。この難しさは、主に以下の理由によって引き起こされます。

情報量:
膨大な情報量という問題があります。現代では、数え切れないほどの論文に簡単にアクセス可能になっています。しかし、その豊富さが逆に選択を難しくしています。ICUの看護について調べたいと漠然と思い、「ICU nurse」とPubMedで検索すると16,300の論文がヒットします。これでは、自分の知りたい情報を見つけることは困難でしょう。

キーワード:
情報を絞るためには、論文検索において「キーワード」の選定が非常に重要です。適切なキーワードを選ぶことは、目的の情報へと導く鍵となりますが、これがまた非常に難しいのです。単に検索ボックスに言葉を入力するだけではなく、思考プロセスが要求されます。
例えば、ICUの清拭が感染予防に影響するか調べたいとします。「ICU bathing infection」とPubMedで検索すると219の論文がヒットします。論文の数も多く、エビデンスレベルが高い論文かどうか分かりません。そもそも、この単語で知りたいことを網羅的に検索できているかも不明です。そのため、単語の数を増やしつつ、エビデンスレベルを上げるためには、以下のような検索式が考えられます。(“Intensive Care Units”[Mesh] OR ICU OR “critical care”) AND (bathing OR “skin cleansing” OR hygiene) AND (infection control OR “infection prevention” OR “cross infection” OR “nosocomial infections” OR “hospital acquired infections”) AND (Randomized Controlled Trial[ptyp] OR RCT)。この検索式を使うと、110の論文まで絞り込むことができ、さらに単語の数を増やしたことで網羅的に検索ができていると考えられます。
このキーワードや検索ルールを覚えるだけでも大変です。

また、質の高い情報を識別する能力も論文検索を難しくする要因の一つです。すべての研究が同じ品質を持つわけではなく、中には信頼性に欠けるものもあります。しかし、特に研究初心者にとっては、これらの区別をつけることが困難です。

これらの問題により、初学者にとっての研究のハードルは非常に高くなります。

助けて!猫型ロボット

0を1にするのは大変な作業です。0点のテストを持って、青い猫型ロボットに助けを求めたいところです。しかし、現在は21世紀です。22世紀に開発されるロボットはまだ存在しません。しかし、AIが登場しています。AIの力を借りて、最初の論文検索のハードルを下げてみましょう。

ここでは、代表的な無料で使える(一部は有料ですが、最初の一歩としては無料機能で十分)AIによる論文検索方法を紹介したいと思います。

大前提として、一部は日本語に対応していますが、基本的には英語です。以前紹介した英語翻訳AI、例えばDeepLなどを活用して、聞きたい内容を英語に変換しましょう。

変換する際の注意点ですが、日本語の主語が省略されることが多いです。主語がない英文は、かなり違和感があります。質問文の日本語を考える際には、聞きたいことの主語と述語を意識してください。

無料で使える!代表的なAIによる論文検索方法

<Perplexity AI(パープレキシティAI)>
https://www.perplexity.ai
知りたいことを入力することで、質問に対する回答を引用付きで文章で答えてくれます。このAIは日本語対応しており、日本語で質問することが可能です。ただし、その場合は日本語のWebサイトや論文を引用することになります。英語文献を知りたい場合は、英語で質問しましょう。また、引用先が論文だけでなく、個人のWebサイトからも引用されることがあります。最後か最初に「in PubMed」と追加するとPubMed内に限定して引用してくれるため、論文からの引用に絞ることができます。例えば「ICUでの清拭が感染予防に効果がありますか?私はエビデンスレベルが高い論文をPubMed内から知りたいです。」と質問し、これをDeepLで翻訳すると「Are wipes in the ICU effective in preventing infection? I would like to know from within PubMed which papers have a high level of evidence.」となります。背景知識があれば、清拭を「wipes」ではなく「bathing」と考えるかもしれませんが、AIが意味を解釈してくれるため、結果的に「bathing」に関連する論文を探してくれます。とりあえずの検索におすすめです。

<Consensus(コンセンサス)>
https://consensus.app/search/
Consensusの特徴は、最初から査読された論文を基に検索してくれることです。そのため、先ほどの質問「ICUでの清拭が感染予防に効果がありますか?」を「Are wipes in the ICU effective in preventing infection?」として英語で検索するだけで十分です。日本語で検索すると関連性の低い論文がヒットする可能性があるため、英語で質問することをお勧めします。特に興味深いのは、Synthesizeという機能で、クローズドクエスチョン(Yes、Noで回答できる質問)に対して、上位に表示された論文からYesかNoのどちらが多いかを示してくれます。これは、厳密性よりも大まかな傾向を捉えるのに適しています。

<SciSpace(サイスペース)>
https://typeset.io
SciSpaceでは、知りたい内容を検索することで、複数の論文の論文名(paper)、論文の見解(Insights)、結論(TL;DR: Too Long; Didn’t Read)を一覧表示してくれます。知りたいことが明確であれば、複数の論文を一度に読むことができるため、非常に効率的です。また、日本語で検索しても英語の論文を検索してくれます。加えて、論文を深掘りして読みたい時にはPDFをアップロードして質問すると、具体的な回答を得られます。質問のテンプレートも提供されており、論文をどのような観点で読めば良いかについての学びも得られます。

無料で使える!代表的なAIによる論文検索方法

<ChatGPT(チャットジーピーティー)>
https://chat.openai.com
最も有名なAIの一つであり、汎用性が高いため、ChatGPTに直接質問しても英語論文の引用付きで答えてくれます。そのため、PubMedでの検索式を作成するのにも使用できます。例えば、「あなたは研究者です。PubMedでICUでの清拭が感染予防に効果があるか調べるための検索式を作成してください。必要な情報があれば質問してください」と指示することで、PubMedの検索式を作成してくれます。論文検索に慣れてきた人は、このような方法で検索式を作成してみると良いでしょう。

<Connected Papers(コネクティッドペイパーズ)>
https://www.connectedpapers.com
あなたが知りたかった内容にマッチする論文が見つかった場合、関連する論文を読んでさらに理解を深めたいと考えるでしょう。そんな時にはConnected Papersがおすすめです。Connected Papersは論文のDOI(論文に割り振られた番号)やタイトルを入力することで、関連する論文を調べてくれるサービスです。関連性の強さや引用数が多い論文を視覚的に図で示してくれるため、その分野における知見を広げるのに役立ちます。より深い理解を求める方には特におすすめのサービスです。

AI検索を挑戦するあなたに

AIを活用すると、短時間で知りたい論文を見つけることが可能です。しかし、使ってみてもうまく欲しい情報が出てこない場合があります。その時は、問題がAI側ではなく、もしかするとあなた自身にあるかもしれません。AIは質問や指示に対しては明確に答えてくれます。しかし、抽象度が高い、曖昧な質問には同様に曖昧な回答しか返してくれません。 まだ私たちの大好きな青い猫型ロボットのように、言葉にできない考えを察して、的確に応えてくれるほどには発展していません。そのため、何を知りたいのか、なぜ今その論文を調べているのか、迷ったら一度立ち止まり、目的と目標を確認しながら前に進めてみてください。検索に努力を重ねた結果、自分が求めていた論文を見つけると、それは非常に嬉しい瞬間です。皆さんが運命の論文に出会えることを心から応援しています!

企画・監修:ハルジローのオンライン看護学院
イラスト:YUI
ハルジロー ハルジロー

集中治療領域で看護師として働きながら、博士課程修了(救急・集中治療医学専攻)。Youtube/Instagram/TikTokで教育コンテンツを配信中。
クラウドファンディングで作成した著書は達成率1458%(1,458,600円)となり看護学部門でAmazonベストセラーランキング1位を獲得。
研究者としても多くの英論文を発表している。

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