#01 美容業界に偏見があった私が美容看護師になった理由
公開:2023.04.19
更新:2023.05.01
今では天職だと思っている美容の仕事も、病院で勤務していた時には「美容はギラギラしていて、まともな医療者がいなそう・・・」という偏見がありました。そんな偏見がありながらも、なぜ今美容看護師として働いているのかというお話ししたいと思います。
一般的な美容看護師のイメージ
病院を辞めて美容クリニックへの転職をすると決めた同期に対して、先輩や師長さんが本人のいないところで話す会話には否定的な言葉が多かったように思います。
「せっかく国家資格があるのに偽物の看護師になるのね」
「看護師の道を外れた人がいく場所でしょ」
「美容看護師になるなんて勿体ない」
どうしてそんな風に言うのだろう?病院の看護師だけが正しい生き方なのだろうか?と思う反面、私にも同じような偏見がありました。その理由として、思い当たるものがいくつかあります。今となればなぜそれが必要なのか理解することができるのですが、SNSで美容クリニックの検索をしていたときに出てくるのは音楽に合わせて踊る医療者、容姿が派手な先生が芸能人やインフルエンサーと共にクリニックの看板の前で医師が写真を撮っていたり、ド派手なカラーのスクラブや医療者が爪や髪を明るくしたりしているのにも当時病院という限られた世界にいた私にとって少し抵抗感があったように思います。
なぜ美容看護師を目指したのか
私自身美容に偏見を持っていたので、病院を辞めたばかりの時には第一選択として美容への転職があった訳ではありませんでした。
当時、病院で働きながら病気になってしまった患者様へ看護師としてできるアプローチには限界があって、何度退院しても生活習慣が理由でまた戻ってきてしまうことに疲弊していました。また、全ての患者様が治療や手術を望むからするのではなく、中には家族の強い希望で本人の意思とは別に治療がすすむことも多くありました。
そんな中で看護をしていた私は当人に求められていないことをしなければいけないことに対し、自分の存在意義がわからなくなることもありました。そのため、次の仕事では病気になる前の健康な人+自ら進んでやりたいという自発的な気持ちの人をターゲットにできる職種を探していました。最初に転職したのは予防医療がメインで少しだけ美容が一緒になったクリニックでした。病気ではない人が自分の意思で健康寿命を延ばすために検査に来たり、病気ではないけどもっと美しくなりたいと願う人が来たりと自らの意思で足を運んでくれる人しかいないので心が楽になったのを覚えています。
美容を入り口にするとメンタルヘルス的にも人生をより良くするお手伝いができることに気が付いてからはどんどんのめり込んでいきました。
どんな葛藤があったか
最初にぶち当たった葛藤は「サービスを売る」ということに対してです。病院では検査や手術を値段と共に患者様に売ることはありません。またより高いオプションと付けたり、回数を組ませるコース契約などのお会計の場にも居合わせたことはありませんでした。
クリニックでは数字を見なければいけないので、クリニックの売り上げを考えつつ、お客様には不利益がないように必要なものを必要な人に届けるのが難しかったです。
私が勤めた先のクリニックは幸い不要な高額なオプションを付けたり、必要のない治療のコース契約を迫ることはありませんでしたが、美容から病院に戻る選択をした看護師の友人達の話を聞いていると、必要のないものや意味のないものを売り上げのために売るのが辛くなったという悲しい現実があるようです。
病院と美容の大きな違い
クリニックに転職をして感じた一番大きな違いは対象が患者様からお客様になることでした。どちらもサービス業であることは変わりませんが、3割負担の保険診療と10割負担の自由診療ではサービスの質も、お金を使う重みも、求められるもの自体が違うのではないかと思います。病院では高齢者や患者様のご家族の方に医療者が敬語ではなくタメ口を使うのは日常茶飯事で見る光景でした。どうしても病院の中で先生はお医者様として慕われ、それでも良しという風習があったように思います。美容クリニックでは病院と比べると接客・接遇面の教育がしっかりとしており、お客様を大事にできなれければ離れていってしまうという自覚もあるように思います。病院では呼ばなくとも毎日患者様が留めなく来院されますが美容クリニックは集客に力を入れなければお客様はいらっしゃいません。
例えば、病院では患者様が点滴の際に「沢山失敗していいよ」とやり直しを許してくれていたルートキープ、美容クリニックでは「綺麗になるために来ているのになんで失敗されないといけないの?」と一発で担当を外されることもあります。
美容看護師の仕事
私の思う美容看護師の仕事とは命と同等の重さのお顔を預かる仕事です。病棟時代は命そのものに触れる仕事をしていて、美容は肌を通してお客様の人生を救う仕事だと思っています。ニキビ1つで1日が憂鬱になるように肌に悩んでいる方の中にはカウンセリング中に涙を流されるほど苦しんでいる方もいらっしゃいます。
肌は美容医療を1回受けるだけでは変わりませんし、遺伝的要素や生活習慣、スキンケア習慣も大きくかかわってくるので一歩一歩長い時間をかけて治療していきます。
そのことを理解してもらい、お客様と一緒にゴール設定をして、肌の治療計画を立てるお客様にとっての肌のパートナーだと思っています。
とはいっても、様々な美容クリニックがありお客様にとっても選択肢が多いので、最初から最後まで肌を担当させて頂けるとは限りません。指名制度がないクリニックでは毎回施術に入る看護師が異なることも多いので、1回1回の施術を本気で肌を治したいというお客様と同じ気持ちで、本気で施術をすることが大切だと思います。
こんなイメージに変えていきたい
私も美容看護師としてSNSを活用しているのでキラキラしていると思われることはあるのではないかと思います。一見キラキラと煌びやかに見える美容業界も、実際には地味で泥臭い努力の上に成り立つ現実もあります。今は看護学校で美容の分野については教わることはなく、美容という選択肢があることについても講義はないと思いますし、正式な領域としては認められていません。
美容看護師が、看護師にとって楽な道や邪道ではなく、正しく清い誇るべき分野だと認めてもらえるように土台を作っていきたいです。
私もいち美容看護師の端くれとして、まだ無き道を作っていく覚悟ですし、後に続く美容看護師の後輩が生きやすいように、活躍しやすいように自分の行動と共に働き方を拡大していくつもりです。
今後も美容看護師の働き方やキャリアについて、現役だからこそお伝えできるリアルを連載していければと思います。
美容看護師。美容クリニックの立ち上げと看護師のキャリアをサポートする会社経営も行っている。自分軸の美容・マインド・思考を日々発信しています。
夢は美容領域が看護師の正しい選択肢として認められるようになること。