#09 麻酔看護師の働き方【手術室の働き方】

公開:2023.09.08

こんにちは!しゅがーです。
私の連載企画「手術室看護師の気になることを大解剖!オペ看ラボ」では、オペ看のみなさんが知りたいけど、なかなか知ることができないリアルなオペ看のことを紹介していきます。
今回のテーマは、「麻酔看護師の1日」についてお送りします!

第3回は、麻酔のことならこの方!
麻酔看護師のぱんさんをお呼びしてインタビューをしてみました。

ぱんさんのプロフィール

手術室で約4年、その後、病棟経験を経て大学院で周麻酔期看護を専攻。卒後は麻酔科に所属し、麻酔診療の補助を担っている。
手術麻酔だけでなく、術前外来、術後疼痛管理、手術室外鎮静、院内救急対応など麻酔科が関わる領域で活動中。
また、最近では手術室だけでなく病棟看護師さんの勉強会や学生教育にも携わり、麻酔看護をもっと色んな方へ知って貰えるよう頑張っています!

麻酔看護師ぱんさんにインタビュー!

麻酔看護師ってなに…?

しゅがー しゅがー
よろしくお願いします。まずはお名前を教えてください。
ぱん ぱん
「ぱん」と申します!
麻酔や手術にまつわる知識を発信しています。よろしくお願いいたします。

しゅがー しゅがー
麻酔看護師は何年目なんですか?
ぱん ぱん
麻酔に携わるようになって、もうかれこれ5年以上になります!
もとは手術室看護師だったんですよ(^^)
しゅがー しゅがー
麻酔看護師…認定看護師…では、ないんですよね…?
ぱん ぱん
認定看護師ではないんですよ~!
麻酔看護師というのも実は正式な名称ではなくて(汗)

日本で麻酔の補助業務をしている看護師って色んな立場の人がいるんですよ。

周麻酔期看護師、診療看護師、特定行為研修を修了した看護師(通称 特定看護師)と呼ばれる人たちですね!

私はその中でも周麻酔期看護師にあたります(特定行為も後から修了)。
※麻酔看護師について

【周麻酔期看護師: PAN】
麻酔科専門医の直接指示と監督の下で、麻酔業務補助を専門に行う看護師。教育は大学院修士課程で、麻酔管理に必要な医学知識を学び、麻酔科医と同じ目線で患者評価・判断能力を培う訓練がされる。1) 2)

【診療看護師: NP】
大学院修士課程で教育され、日本NP教育大学院協議会の試験に合格し認定資格を受ける。医学に関する基本的な知識・技術を習得することを目指しており、また特定行為38行為実践に関わる診療科範囲が組み込まれている。卒業後の活動の場は様々で、一部のNPは麻酔科配属され麻酔診療補助に携わっている。3)

【特定看護師(通称)】
特定行為とは、看護師が「診療の補助」の範疇として包括指示(手順書)により実施できる医行為。38行為21区分あり、厚生労働省に指定研修機関認定を受ける施設で実施。修了者は看護師とは独立した新たな公的資格として認定されるわけではない。特定行為研修は各行為ごとに受講が可能だが、2018年には麻酔に関連する特定行為をまとめたパッケージが作成された。4)

参考文献
1) 宮坂勝之、片山正夫:我が国のNP, PA制度を考える:周麻酔期看護師(Perianesthesia Nurse) の役割. 日本外科学会雑誌118(1) : 94-96, 2017

2) 日本周麻酔期看護医学会
https://jspanm.jp/(2023年7月30日 最終アクセス)

3)日本NP教育大学院協議会:診療看護師(NP). 2020
https://www.jonpf.jp/document/np.pdf(2023年7月30日 最終アクセス)

4) 厚生労働省:特定行為とは
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000050325.html (2023年7月30日 最終アクセス)

Instagramを始めたきっかけは?

しゅがー しゅがー
Instagramを始めたきっかけはなんだったんですか?
ぱん ぱん
元は手術室看護師だったのですが、オペ室で一番苦手だったのが「麻酔」のお勉強でした…。

しかも新卒で入った病院は忙しくて、先輩や先生にも聞き辛いし、毎日手順書作ったりで麻酔の勉強まで手が回らない、そもそもどうやって勉強したらいいのかわからない、そんな若手の一人でした。

苦手を克服するために周麻酔期看護を学んで、今は実際に麻酔に詳しくなった。
そうなると今度は若かりし自分と同じ悩みを持つ方からの相談を受けるように。

少しでもそういう方の役に立てたらという思いで始めました!
また麻酔補助をする看護師ってまだまだ認知が低いので、これをきっかけに知ってもらえたらと思ってます(^^)

しゅがー しゅがー
克服するために周麻酔期看護の勉強したんですね!かっこいいです!!

そういえば、ぱんさんのパンダのキャラクター、可愛いですよね。
お名前の「ぱん」は何か由来があるんですか?
ぱん ぱん
周麻酔期看護師って、英語でPerianesthesia Nurse、略して『PAN』と言うんです。

アカウント作成を考えた時に、「PAN、ぱん、ぱん……ぱんだ?!」と安直な感じで決めてしまいました(笑)
しゅがー しゅがー
へええ!PANって言うんですね!
なるほど、だからパンダなんですね。
ぱんさんのInstagramより

麻酔看護師の1日は?

しゅがー しゅがー
麻酔看護師ってかなり珍しいですよね。
一体どんな働き方なのか教えて下さい。
ぱん ぱん
日によって業務内容が変わるのですが、一番多いのは麻酔業務、次に外来ですかね(^^)
麻酔看護師の1日を紹介します。

頸椎後方固定→小児MRI鎮静

【7:15】準備(1件目)
前日に担当医と打ち合わせた内容で準備

【7:30】前日の全身麻酔症例のカルテチェック
【7:45】術後回診

    
【8:00】麻酔科カンファレンス
当日の麻酔症例を麻酔科全員で共有します。私たちもプレゼンするのでちょっと緊張。

【8:20】術後回診の記録入力
    
【8:30】患者さんの入室

【8:40】麻酔導入、挿管、Aラインなどの確保、腹臥位へ体位変換
麻酔科専門医の直接指示のもと実施。症例によってはアシスタントを行う。

【9:00】執刀
執刀後、患者さんの状態が安定していれば、麻酔プランを再度擦り合わせ、5分以内に駆けつける事ができる条件で医師は部屋から離れる事ができます。変化があったり、ドクターコール基準にかかれば電話で報告、対応。

【11:00】休憩①
手術の進行具合、医局員全員の食事を優先するため休憩は分割が殆どです。

【11:30】麻酔科医師の休憩

【12:30】終刀、体位変換、麻酔覚醒、抜管

【13:00】ICU退室
ICUの担当医へ申し送り

【13:30】休憩②

【14:00】翌日の症例の予習、患者診察、担当医とプランを相談

【15:00】準備(2件目)

【15:30】病棟で小児鎮静
病棟は手術室より設備が整ってない、慣れない環境なのでいつも以上に緊張感のある麻酔導入です!私は麻酔科の先生の周辺サポートをしています。

【16:00】MRI室へ搬送

【17:00】MRI終了、鎮静OFF、病棟へ搬送、鎮静後評価

【17:15】日勤終了

【17:30】外来の予習
どうしても日勤で終わらない時は終了後に予習してます(涙)

【19:30】帰宅

術前外来の日

【7:30】前日の全身麻酔症例のカルテチェック
夜間に問題なかったか・疼痛コントロール等を確認していきます!

【7:45】術後回診
麻酔科医と共に回診。問題のある症例は主治医、病棟看護師にも情報共有、プランを提案することも。

【8:00】麻酔科カンファレンス
    
【8:20】術後回診の記録入力
入室までの間に朝回診の記録を一気に行います。

【8:30】患者さんの入室手伝い
外来担当でも人手が必要な部屋へ手伝いに!

【9:00】外来患者の再確認、必要書類の準備   
前日までに外来患者の問題点・麻酔プランを医師と共有しているので、内容を再確認。緊急患者が増えてないか確認し、ある場合は予習。

【9:30】外来開始
歯科・薬剤師診察の後、問診から担当。麻酔をかける視点で全身を診察。麻酔についての説明、不安の傾聴などを行っている。他科コンサルが必要な場合は、外来麻酔科医に報告し調整。

【12:30】休憩

【13:30】外来再開

【16:00 】翌日の症例の予習、患者診察、担当医とプランを相談

【17:00 】手術終了した部屋の抜管退出手伝い

【17:15】日勤終了

しゅがー しゅがー
す、す、すごいです!麻酔の知識だけでなく、経験も必要そうですね。

手術室看護師を経ての麻酔看護師。看護師側の気持ちも、麻酔科医側の気持ちも分かるようになるのはかなりの強みですね!

リスクと責任が大きい反面、その分やりがいがある

しゅがー しゅがー
それでは最後に、麻酔看護師として楽しいところや大変なところを教えてください。
ぱん ぱん
麻酔補助は、麻酔科医と対等にディスカッションできるくらいの知識やスキルが必要になります。

また、麻酔管理は安定していれば大変ではないように見えるかもしれませんが、時には秒単位で刻々と患者さんの状態が変化する中、アセスメントと対応が求められる非常に緊張感のある仕事です。

でもリスクと責任が大きい反面、その分やりがいがあります!また看護学と医学の両方の視点があるので、手術室看護師の時より視野が広くなっている実感があります。

手放しに楽しいよ!とは言えない世界ですが、少しでも興味を持って頂いたり、麻酔に苦手意識がある方へ「へぇ〜、なるほど」と思えるきっかけになればと思います。

Instagramではぜひ気軽に声をかけてくださいね!
しゅがー しゅがー
ぱんさん、インタビューありがとうございました!

まとめ

今回は、麻酔看護師ぱんさんの一日を紹介しました。
私は、ぱんさんとお会いして初めて「麻酔看護師」の存在を知りました。
なんとなくしか分からなかった、周麻酔期看護師、診療看護師、特定行為研修を修了した看護師、それぞれの違いも分かるように!
私は「スキルアップ=認定看護師」というイメージがあったのですが、それだけじゃないんだなぁと思いました。
働き方って、たくさんあるんですね!

さて、次回もまた他の手術室看護師さんに声を掛けて「手術室看護師の1日を教えて下さい!」と、インタビューをしてみようと思います。
楽しみに待っていて下さいね。

手術室看護師の1日を教えて下さい!」BACK NUMBER

第1回:大学病院の手術室看護師 パンダナースさん
第2回:特定看護師の働き方 松原さん

しゅがー しゅがー

新聞配達・営業から看護の道を目指し社会人で受験、准看護師取得。
だんだん看護が楽しくなり、さらに正看護師資格も取得。
手術室が好き!モットーは「楽しく働けると、看護も楽しくなる!」
Instagramでは手術室看護や看護師のお金の知識を発信中。
R3年に脳腫瘍が発覚。開頭手術、放射線治療、抗がん剤治療を経験。
後遺症で失語症になり、現在はリハビリ中です。

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