インタビュー#01 しゅがー「オペ看の楽しさを発信中。小さなことでもできた、成長していることに目を向けていってほしい」

公開:2023.04.19

インタビュー#01 しゅがー「オペ看の楽しさを発信中。小さなことでもできた、成長していることに目を向けていってほしい」
看護師として働きながら、その知識や経験を生かして新しいビジネスを手がけたり、看護とはまったく別の世界でパラレルキャリアを歩んだり、忙しい看護の仕事をしながらでもプライベートを思いっきり楽しんだり…。ナースとしての新しい生き方をみつけようとしているナースたちの”働き方”や”仕事観”に迫るインタビュー企画。第1回はオペ看であるしゅがーさんにインタビューしました!
しゅがーさんのプロフィール

オペ看6年目。高校卒業後は営業と新聞配達の仕事に就く。今後の働き方を考え、デザイナーの仕事にも興味があったが、専門職の資格を取るため准看の学校へ。実習中に看護の楽しさに気づき、その後は准看として働きながら正看護師の資格を取得。正看護師として転職した病院ではICU希望だったが、オペ室配属となる。現在はインスタやメディアでオペ看の楽しさを発信。2021年11月に脳腫瘍(グレード3)のため手術を受け、職場復帰を目指して失語症のリハビリ中。

オペ看の楽しさを知ってもらいたい、きっかけは認定試験の勉強のため

編集部 編集部
しゅがーさんはインスタやメディアなどでオペ室のことについて発信されていますが、この活動のきっかけについて教えてください。
しゅがー しゅがー
実は周術期に関連する資格で、『周術期管理チーム認定制度(※)』というものがあり、その試験勉強のために始めました。私は勉強があまり得意じゃなくて、ひとりで勉強するのもしんどくて。
自分で書いてまとめたノートを投稿すると”いいね“をもらえたので、だんだんとそれがモチベーションになっていきました。画像を作るのも好きなので、楽しくやっていますね。
※参考: https://public.perioperative-management.jp/
しゅがーさんのinstagramの投稿画像
編集部 編集部
勉強しなきゃいけないことと自分の好きなことを組み合わせて続けられているんですね。オペ看さん同士の交流も活発ですか。
しゅがー しゅがー
DMはけっこういただきますね。「私も認定試験受けます」「この間、資格とりました」などと情報交換しながら、こうした投稿もやってほしいとリクエストをいただくようになって。
活動を始めて1年半以上経った今では麻酔に関することや薬、オペに関する機器、オペ看の楽しさなどいろんなことをテーマにやるようになりました。

患者さんも一緒に働くスタッフも、想像力を膨らませて関わる

編集部 編集部
”楽しい”というワードがすごく印象的ですね。しゅがーさんが仕事をする上で、大切にしていることや、日頃から意識していることなどはありますか。
しゅがー しゅがー
想像力がすごく大事だなと思います。患者さんも、一緒に働くスタッフのことも考えるようにしています。だけど、患者さんにも本音と建前があるじゃないですか。言葉ではこう言っているけど、本当は違うんじゃないかなって。
特にオペ室だと、患者さんは麻酔にかかったあとはコミュニケーションが取れない状況です。新人の頃から先輩に「オペ看は患者さんの代弁者だよ」と教わりました。
だから、麻酔がかかる前の関わりがとても重要で、私の職場では術前訪問も基本的には全例で行くようにしています。
編集部 編集部
なるほど。その想像力が大事というのは、なにかきっかけがあったりしましたか。
しゅがー しゅがー
きっかけはなんだろう。やっぱり、オペ室の器械出しでも、全部医師が指示してくれるわけではなくて、マニュアルはあっても、想像を膨らませたり深読みしたりする部分が多いですよね。
この医師はたぶんこういう処置をしたいから、この鑷子が必要だなとか。それで「そうそう、これが欲しかったんだ」と読みが当たるとすごく嬉しくて。
意識しているのは、医師のちょっとしたひと言や雰囲気ですね。今ちょっとピリピリしていたなとか、めんどくさそうだったなとか。
それで、今は指示もらうのをやめておこう、縫合が終わったら声をかけようと、その都度考えています。
編集部 編集部
なんだか営業さんぽい感じもありますね。
しゅがー しゅがー
そうかもしれない、たしかに(笑)。

小さなことでも自分のできていることに目を向ける

編集部 編集部
しゅがーさんが仕事で大変だったこと、つらかったことってなんですか。
しゅがー しゅがー
やっぱりオペ看の勉強量の多さですね。特に1年目のときは本当にしんどくて、毎日泣いていました。私はポンコツだったので、どうやって勉強したらいいかもわからず、「これ前もやったでしょ」と何回も言われて大変でした。
それこそ、オペ室で使う器械は多いので、イラストを描いて手で触って覚えましたね。すぐ忘れちゃうのでノートに書いて、カンペも何個あるのってくらい…。
しゅがーさんが勉強に使ったノート
編集部 編集部
そのしんどい時期があるなかで、どういうことがきっかけで楽しいかもと思えるようになったんでしょうか。
しゅがー しゅがー
それは先輩が私にできていることを伝えてくれたからですね。私、本当に何もできないとネガティブなことばかり考えていたんですけど、先輩が「全然できてるじゃん」「できてるところがあるのに、なんでそっちを見ないの」と言ってくれて。
それからバルンを入れられたとか、そのくらいのことでも「きちんとできたことだよね」と先輩から言われて。自分でも成長を感じられて、小さなことでも全然いいんだと思えるようになりましたね。

オペ室はチームの一体感が大事、医師とも積極的に話すように

編集部 編集部
先輩ができていることを伝えてくれて、オペ看の楽しさを見出せていったんですね。しゅがーさんにとって、オペ看のやりがい、面白さってどんなところだと思いますか。
しゅがー しゅがー
チームの一体感を持って働けるところですね。オペ室だと患者さんが入室されたらみんなで対応して、オペをして、オペが終わったらみんなで見送るという流れがあります。一人の患者さんのことをみんなで力を合わせてみていくのが、シンプルに楽しいですね。
編集部 編集部
チームの一体感ですか、いいですね。ただ、いろんな立場や考えの人が集まって力を合わせて患者さんに向き合うとなると、さまざまな工夫がいると思いますが、なにか意識していることはありますか。
しゅがー しゅがー
1年目のときに比べて医師とよく話すようになりましたね。たとえば、オペ中に怒られたことを、皮膚ペンで手にメモしておいて、後から「なんであのときダメだったんですか」と聞きに行っていました。
まさしく、マニュアルにはないところですよね。そうしていくと、医師もだんだん教えてくれるようになって、医師が考えていることを知れて、それは良かったなと思います。
後輩にも医師とコミュニケーションをとることが大事だよと伝えていて、一緒に医師のところについて行くこともあります。

自分が患者となってあらためて考えさせられたこと

編集部 編集部
しゅがーさんは2021年に脳腫瘍と診断され手術を終えて、復職に向けてリハビリ中とのことですが、現在はどのような症状があるんですか。
しゅがー しゅがー
失語症の症状としては、複数人がしゃべっていると、誰が何を言っているのかがわかりにくいことがあります。音のボリュームがうまく調整できないような。
たとえば、スーパーに行くと店員さんやお客さんの声、店内のBGMの音で具合が悪くなったことがありました。音楽を聴きながらの勉強もできなくなりましたね。今はだいぶ改善されてはいるんですけど…。
なので、オペ室のようにいろんな職種がいてやりとりをする場は、まだちょっと難しいですね。あとは、数字がうまく言葉に出てこない、間違った数字を言ってしまうこともあります。
失語症のリハビリに使用したノート
編集部 編集部
そうした症状に対して、リハビリはどのようなことをされているんですか。
しゅがー しゅがー
今は特別なことはしていません。ただ、「人と喋ることをしてください」とは言われています。失語症の人は、思っていることをうまく伝えられないストレスや苦手意識があり、心を閉じてしまう人もいるそうなので。
編集部 編集部
そうなんですね。しゅがーさんがこれは患者にならなかったら一生この気持ちはわからなかっただろうなと思うことはありますか。
しゅがー しゅがー
先ほども話した、本音と建前は全然違うということですね。看護師は「手術怖くないですか?」「何かあったらなんでも言ってくださいね」などとよく言いますけど、忙しそうで言いにくい、つい「大丈夫です」と言ってしまうことはありました。
だから、私が復職したときはもっとゆっくり関わりたいですね。時間をかける、患者さんの近くにいることは本当に大事だなと、あらためて考えさせられました。

オペ看の楽しさを伝え、今後の選択の幅が広がってもらえるように

編集部 編集部
しゅがーさんの活動や仕事、病気との向き合い方をいろいろ知れました。なにか今後やりたいこと、目標などはありますか。
しゅがー しゅがー
オペ室って「怖い」「閉鎖的」「同じ看護師でもジャンルが違う」とかよく言われますけど、そういうのがなくなればいいなと思います。
私はインスタを通して、いろんなオペ看さんと交流して、病院によってもいろんなルールがあることを知れているので、同じオペ看同士でも気軽にやりとりできたらいいですよね。
いろんな考え方があるから、私もそれを知りたいし、いろんな人にも知ってもらいたいんです。私個人の価値観の押し付けみたいになってしまうのが嫌なので。
これから看護師として働く学生や病棟以外の働き方に興味がある人にとっての選択肢としてもそうですし、オペ看として今後どのように働いていくか考えたときに選択の幅が広がってくれればいいなと思います。
編集部 編集部
そうですよね。では、最後にこの記事を読んでいる看護師のみなさんに向けてメッセージをお願いします。
しゅがー しゅがー
お仕事をするにしても、まず自分が楽しいと思えることが一番だと思います。仕事がしんどいと感じている人も少なくないですよね。
それでも小さなことから「これはできた」「これは楽しい」と思うことを見つけてみると、少しずつ看護師の仕事も楽しいかもと思えてくるかもしれません。看護師の仕事はきつくて当たり前と言われることもありますけど、私はそんなことはないと思っています。
編集部 編集部
しゅがーさんが楽しく仕事をされているんだなということが、すごく伝わってきました。ありがとうございました!

聞き手・ライター:白石弓夏


看護師兼ライター。小児科や整形外科病棟で10年以上勤務。転職の合間に派遣でクリニックやツアーナース、健診、保育園などさまざまな場所での看護経験もあり。現在は非常勤として整形外科病棟で働きながらライターとして活動して5年以上経つ。

しゅがーさんがNurse Life Mixで担当する連載企画はこちら

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しゅがー しゅがー

新聞配達・営業から看護の道を目指し社会人で受験、准看護師取得。
だんだん看護が楽しくなり、さらに正看護師資格も取得。
手術室が好き!モットーは「楽しく働けると、看護も楽しくなる!」
Instagramでは手術室看護や看護師のお金の知識を発信中。
R3年に脳腫瘍が発覚。開頭手術、放射線治療、抗がん剤治療を経験。
後遺症で失語症になり、現在はリハビリ中です。

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