#08 “英語論文アレルギー“の治療法

公開:2024.02.14

ハルジローのオンライン看護学院の連載企画「病棟研究はじめの一歩」では、看護師&医学博士&研究者ならではの視点で、看護の仕事に役立つ知識やテクニックを紹介していきます。

今回のテーマは、「“英語論文アレルギー“の治療法」についてご紹介!

これまで、英語の論文の探し方や読み方を解説してきました。それでも「英論文の読み方だって?私は英語すら見たくない!」という声が聞こえてきそうです。英語に対する抵抗感は人によってはアレルギーのように、「英語」という言葉だけで発症することもあります。

少量ずつ摂取することで克服する

アレルギーの治療法として、少しずつアレルギー物質を接種する方法があります。例えば、軽度の卵アレルギーを持つ子供は、少しずつ卵を摂取することで克服できることがあります。同様に、英論文アレルギーも英論文に触れ続けることで少しずつ解消します。「英論文は英語の基礎勉強から」と考える人も多いですが、それは卵アレルギーの対策にご飯を食べているのと同じです。食事の食べ方は覚えられますが、卵アレルギーを治療する効果はありません。私自身も、専門分野以外の論文を読む時に、軽度のアレルギーが発症します。また、読めるようになったとしても、会話はできません。厳しいことを言いますが、英論文を読めるようになるには英論文に触れ続けるしかありません。

腹を決めて英論文に挑戦しようと思った皆さん、食べ方の処方をレクチャーします。いきなり大量のアレルギー物質を摂取すれば、アナフィラキシーショックを起こす恐れがあります。一方で、何もしなければ症状は改善しません。そのため、英論文を日本語に翻訳して、食べやすくすることでアレルギーを軽減しましょう。最終的には英語を読み、そのまま意味を理解できるようになるのが目標ですが、皆さんは英語アレルギーだけでなく、論文アレルギーにもなっているかもしれません。普段の仕事で調べ物をすることはあっても、論文を読んでまで調べることは少ないでしょう。そのため、まずは翻訳ツールを使いながら英論文に触れていくことをお勧めします。

最初に用意するもの

まずはアレルギー食材を食べるための食器を用意しましょう。卵アレルギーの子供に慣れない箸で食べさせるのは無理です。まずはスプーンなど使いやすい食器を選びましょう。英論文を読むためにまずPCを用意しましょう。もちろん、スマートフォンやタブレットでも同様の操作は可能ですが、画面の大きさや資料と翻訳ツールの行き来の手間を考えると、初心者にはPCが必須です。PCが苦手な方でも、病院のカルテを使用できるレベルであれば問題ありません。また高性能のPCでなくても作業は可能です。次に、役立つアプリを紹介します。基本的にはすべて無料で使用できます。

日本語に翻訳して、食べやすくしよう

<DeepL>
 DeepLは自然な言語で翻訳をしてくれるサービスです。Googleで「DeepL」と検索すれば、トップに表示されます。英語の文をコピーして貼り付けることで翻訳されます。見た目もシンプルで使いやすく、カーソルを合わせることで、どの英語がどのように訳されているかが分かりやすいです。Windows版のアプリでは、Ctrlキーを押しながらCを2回押してください(Ctrl+C+C)。そうするとアプリが起動し、すぐに翻訳を確認できます。Macの場合はCtrlキーをCommandキーに変えてください。この操作は便利で私もよく利用しています。無料版でも十分ですが、有料版ではPDFを貼り付けてそのまま翻訳することも可能です。DeepLは翻訳機能だけなので、翻訳しても知らない単語が出てきたら別途調べる必要があります。

<ChatGPT>
ChatGPTは対話型AIの一つです。これも「ChatGPT」と検索することで簡単に見つかり、Web上で使用できます。メールアドレスの登録などが必要ですが、一度登録すればその後は問題なく使用できます。登録方法はここでは詳しく説明しませんが、英語の文章が並んでいるため抵抗を覚える人もいるかもしれません。「YouTube」などで「ChatGPT登録方法」と検索すれば、動画で登録方法を確認することもできます。自信がない人は動画を見ながら調べてみてください。登録ができたら翻訳したい英文を入力して「英文を翻訳して」と記載すれば翻訳してくれます。翻訳作業だけならDeepLの方が簡単ですが、ChatGPTの特徴はAI機能を使えることです。分からない単語があれば、その場で意味を尋ねることができます。また、少し長い文章を送って「要約して」と命令すれば要約してくれます。難解な場合には「子供でも分かるように翻訳して」と命令すると、より簡単な言葉で説明してくれます。このように、翻訳だけでなく、その場で意味を理解することができるのがChatGPTのメリットです。ただし時々誤った情報を提供することがあるので、最低限の知識を身につけておくことが重要です。この誤った情報を「Hallucination(幻覚)」と呼びます。また、翻訳や基本的な質問には無料で対応できますが、より高度な質問やWebサービスとの連携、絵を描いてもらうなどの機能を利用するには月額20ドルが必要です。まずは無料版から始めることをお勧めします。

<ライフサイエンス辞書>
少し英論文に慣れてきたら、ライフサイエンス辞書を使ってみるのがおすすめです。これは医療や生物学の専門用語を集めたWeb辞書で、専門用語に強いのが特徴です。EtoJ(英語から日本語への変換)Vocabularyサービスを利用することができ、翻訳したい文章をペーストすると、日本語の翻訳は表示されませんが、単語をクリックすることでその意味がすぐに表示されます。英語の文章はそのまま残っているため、英語をそのまま読む訓練になります。アレルギーが少し緩和してきた方は、ぜひ使用してみてください。

アレルギー治療を続けるための習慣づくり

ここまで読んでみて英論文に挑戦してみた方、素晴らしいです。しかし、慣れない作業のため、一本だけ読んで満足してしまう方も多いでしょう。しかし、読み続けなければ英論文アレルギーは克服できません。卵アレルギーならば両親が治療を継続してくれますが、大人は自分自身で管理する必要があります。そこで、継続するための方法として、アウトプットする環境を整えることをお勧めします。アウトプットする理由を見つけることで、強制的に英論文を読むことができます。具体的には以下の3点が考えられます。

アウトプットのアイデア

1.抄読会
抄読会を病棟や友人と実施する。 気が合う仲間と抄読会を開催するのも良いでしょう。持ち回りにすることで負担を減らしつつ、継続して実施できます。「周りにそんな人がいない」という人は、次の方法を試してみましょう。

2.SNSで発信
読んだ内容をSNSやブログを通して発信する方法です。多くの人の目に触れる機会を設けることで、自分で内容を細かく見る必要が出てきます。ブログなどは開設する手間で大変という方は、noteなどの文字メディアでまとまった文章を提示するのも良いでしょう。私は大学院時代に雑誌などで与えられたテーマに対してまとめる機会を得ました。公になる文章なので誤ったことは書けないため、一生懸命読んだ記憶があります。今の時代は自ら発信できる場があるため、活用するのが良いでしょう。

3.研究計画の立案
研究計画の立案は、論文を読む機会を大幅に増やす方法です。研究計画を立てる際には、既存の研究を多く読む必要があります。これにより、自然と多くの英論文に触れる機会が生まれます。ただし、この方法は時間を要するものです。また、研究計画の指導をしっかり受けたい場合、大学院への進学を検討する必要が出てきます。これらのハードルの高さは否めませんが、「呪術廻戦」の縛りや「HUNTER×HUNTER」の制約と誓約のように、自分自身の何かを捧げることで能力は確実に向上します。ここでの縛りは、大学院へ投資する時間やお金などが該当します。研究に関する調査や実践を経験することは、研究だけでなく人生においても役立つことが多いです。研究は終わりのない趣味のようなものであり、人生において良い影響を与える可能性があります。

まとめ

この記事では、英論文に対する苦手意識やアレルギーを持つ人々に向けて、段階的に英語に慣れる方法を提案しました。最初はアレルギー症状がでないようにアプリなどを使いながら少しずつ英論文に触れていきましょう。また、継続的に英論文に触れて慣れるための環境を整えていきましょう!
次回は論文の探し方のAIを使った方法を紹介したいと思います。以前にどこのWebサイトで検索するかを説明しましたが、欲しい論文が見当たらない!といった方もいらっしゃると思います。検索にも技術が必要なため、慣れないと難しいです。今回の翻訳ツールと同様にAIを使って自分が読みたいと思う論文の探し方を紹介したいと思います。

企画・監修:ハルジローのオンライン看護学院
イラスト:YUI
ハルジロー ハルジロー

集中治療領域で看護師として働きながら、博士課程修了(救急・集中治療医学専攻)。Youtube/Instagram/TikTokで教育コンテンツを配信中。
クラウドファンディングで作成した著書は達成率1458%(1,458,600円)となり看護学部門でAmazonベストセラーランキング1位を獲得。
研究者としても多くの英論文を発表している。

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