インタビュー#04 角野ふち「ひとつの図鑑を見ているようなわくわくした楽しさを、SNSの仲間とともに届けたい」
公開:2023.04.19
看護師として働きながら、その知識や経験を生かして新しいビジネスを手がけたり、看護とはまったく別の世界でパラレルキャリアを歩んだり、忙しい看護の仕事をしながらでもプライベートを思いっきり楽しんだり…。ナースとしての新しい生き方をみつけようとしているナースたちの”働き方”や”仕事観”に迫るインタビュー企画。第4回は看護師でメディカルイラストレーターでもある角野ふちさんにインタビューしました!
角野ふちさんのプロフィール
看護大学卒業後、総合病院の内科で4年間勤務。趣味の延長で始めたイラストの仕事が軌道にのり、病院を退職。コロナ禍では保健所や保健センター、クリニックなどで一時期派遣として働く。現在は派遣看護師として介護老人保健施設(老健)で働く傍ら、「からだずかん」「角野ふち」の名前でイラストレーターとしても活動。主に看護や医療系のイラストなど担当。日本メディカルイラストレーション学会会員。
看護大学卒業後、総合病院の内科で4年間勤務。趣味の延長で始めたイラストの仕事が軌道にのり、病院を退職。コロナ禍では保健所や保健センター、クリニックなどで一時期派遣として働く。現在は派遣看護師として介護老人保健施設(老健)で働く傍ら、「からだずかん」「角野ふち」の名前でイラストレーターとしても活動。主に看護や医療系のイラストなど担当。日本メディカルイラストレーション学会会員。
可能性が広がっていくメディカルイラストレーションの世界
編集部
現在は看護師とイラストレーターを兼業されているふちさんですが、4年間勤めた病院を退職したのはどのような理由からなのでしょうか。
ふち
趣味をきっかけに始めたイラスト業のお仕事ですが、私が勤めていた病院は副業禁止だったんです。
それでコソコソしながら働くのは自分の性に合わなかったので、上司に相談したら「こういうチャンスはないから、一度やってみたら」と後押しをしてくれて。
それで退職をしてイラスト業も本格的に進めていくことにしました。
それでコソコソしながら働くのは自分の性に合わなかったので、上司に相談したら「こういうチャンスはないから、一度やってみたら」と後押しをしてくれて。
それで退職をしてイラスト業も本格的に進めていくことにしました。
編集部
上司の方が背中を押してくださったんですね。
ふち
そうなんです。
元々、イラストをインスタなどにアップし始めたのも職場の同期がきっかけです。
当時はコロナ禍で外出自粛モードだったこともあり、病院も規制が厳しくてお家でひとり時間が増えた時期でした。
そのなかで気軽にできる趣味、現実逃避みたいな感覚で二次創作のイラストを描いていました。
その話を同期にしたら「そういうのアップしないの?」と言われたことがきっかけでSNSにアップしてみたところ、だんだんと仕事に繋がるようになりました。
元々、イラストをインスタなどにアップし始めたのも職場の同期がきっかけです。
当時はコロナ禍で外出自粛モードだったこともあり、病院も規制が厳しくてお家でひとり時間が増えた時期でした。
そのなかで気軽にできる趣味、現実逃避みたいな感覚で二次創作のイラストを描いていました。
その話を同期にしたら「そういうのアップしないの?」と言われたことがきっかけでSNSにアップしてみたところ、だんだんと仕事に繋がるようになりました。
編集部
現在のイラストのお仕事は、主に看護や医療系が多いですか。
ふち
そうですね。
日本メディカルイラストレーション学会にも所属しているので、メディカルイラストレーションを中心に看護や医学書籍、雑誌、記事の制作、挿し絵などをメインに担当しています。
メディカルイラストレーションは最近日本にも入ってきた学問なので、これから可能性が広がっていく分野だと思います。
日本メディカルイラストレーション学会にも所属しているので、メディカルイラストレーションを中心に看護や医学書籍、雑誌、記事の制作、挿し絵などをメインに担当しています。
メディカルイラストレーションは最近日本にも入ってきた学問なので、これから可能性が広がっていく分野だと思います。
編集部
なるほど。たとえば、こんな場面でもメディカルイラストレーションが使われるのかと驚いた場面とかってありますか。
ふち
私もまだそんなに場数は踏んでいないですけど、ひとつ驚いたのは、医療系の学生さんからの生の意見で「勉強に使う図の描き方を知りたい」と声をいただいたことです。
解剖生理に関する課題で、臓器のイラストをうまく描きたいけど、そもそもどんなアプリを使ったらいいか、どんな機材を使っているのかという話がけっこうあります。
こうしたところでも、メディカルイラストレーションに興味を持つコメディカルも増えているのかなと感じました。
解剖生理に関する課題で、臓器のイラストをうまく描きたいけど、そもそもどんなアプリを使ったらいいか、どんな機材を使っているのかという話がけっこうあります。
こうしたところでも、メディカルイラストレーションに興味を持つコメディカルも増えているのかなと感じました。
解剖生理が苦手な看護師の目線だからこそ、伝えられること
編集部
ふちさんのインスタや制作されたサイトを見てみると、解剖生理に特化している印象がありますが、これはなにか理由があるのでしょうか。
ふち
解剖生理は私が学生の頃に一番苦手だった科目で、ずっと避けていたんですよね。
私のように解剖生理が苦手で看護師になってから苦労される方や、それで仕事がつらくて辞めたいと思っている方が周りでもいたので…。
そういう看護師を一人でも少なくしたい、なにかできることはないかと思ったんです。
解剖生理が苦手な看護師の目線だからこそ、伝えられることがあるかなと。
好きなことと苦手なことをうまくかけ合わせていきました。
私のように解剖生理が苦手で看護師になってから苦労される方や、それで仕事がつらくて辞めたいと思っている方が周りでもいたので…。
そういう看護師を一人でも少なくしたい、なにかできることはないかと思ったんです。
解剖生理が苦手な看護師の目線だからこそ、伝えられることがあるかなと。
好きなことと苦手なことをうまくかけ合わせていきました。
編集部
それからは苦手な気持ちに変化はありましたか。
ふち
今はもう大好きですね(笑)。
自分が考えたキャラクターなので、愛着もわきます。同じく苦手だった人が読みやすい、わかりやすいと言ってくださって、自分の存在意義みたいなものが出てきて、そうして今の自分がありますね。
自分が考えたキャラクターなので、愛着もわきます。同じく苦手だった人が読みやすい、わかりやすいと言ってくださって、自分の存在意義みたいなものが出てきて、そうして今の自分がありますね。
編集部
ふちさんのイラストでは、ときどき医師が登場することもありますが、身近に協力してくれる医師がいたんですか。
ふち
最初に協力してくれた医師は元々職場の同期でしたね。
ただ、フォロワーがだんだん増えてコンテンツが増えていくにつれて、その医師にも負担がかかってしまっていたので…。
それからはそれぞれ専門家の医師や他職種の方にお願いしたいと思い、自分から声をかけていきました。
これこそSNSを使うしかないと、とにかく自分がいいなと思った人にアプローチしまくって巻き込んで。
ただ、フォロワーがだんだん増えてコンテンツが増えていくにつれて、その医師にも負担がかかってしまっていたので…。
それからはそれぞれ専門家の医師や他職種の方にお願いしたいと思い、自分から声をかけていきました。
これこそSNSを使うしかないと、とにかく自分がいいなと思った人にアプローチしまくって巻き込んで。
編集部
すごいですね。SNSだと正直その人がどういう人かわかりにくいですよね。どういうことを意識して声をかけしていったとかありますか。
ふち
まずは投稿している内容にビビッと来るかが、きっかけになることが多いですね。
たとえば、今では一緒に仕事もしている「踊る救急医」先生は自分が苦手だったこと、しくじった経験をもとに研修医だった自分が知りたかったことを発信していて。
私とやっていること、モットーが近いと思い声をかけました。
他にも「からだずかん」のWEBサイトを作るときには、自分ひとりでは作れないので、SNSで募集して、SNSきっかけで知り合ったデザイナーさん、解剖学の先生などと協力して進めました。
たとえば、今では一緒に仕事もしている「踊る救急医」先生は自分が苦手だったこと、しくじった経験をもとに研修医だった自分が知りたかったことを発信していて。
私とやっていること、モットーが近いと思い声をかけました。
他にも「からだずかん」のWEBサイトを作るときには、自分ひとりでは作れないので、SNSで募集して、SNSきっかけで知り合ったデザイナーさん、解剖学の先生などと協力して進めました。
編集部
RPGゲームのように、うまくパーティーのメンバーを集めていっている感じですね。
ふち
たしかにRPG感はありますね(笑)。最初の1年は特に営業マンみたいな感じで、自分より詳しそうな人にどんどん声をかけてやっていっていました。
自分に自信がついてくると同時にいい場所だと思えるように
編集部
最初はイラストをアップするのも仕事にするのも後押しされてと、少し受動的な感じがありましたけど、どのあたりから自分でも変わっていったなと思いますか。
ふち
後押しされる前も、実際やりたかったけどどういう風に発信したらいいのか、恥ずかしさもあって自信がなかったんですよね。
だけど、発信を始めて、他者から評価されるようになる過程で自信がついてきて、同時にいい場所だなと思うようになったんです。
これまで全然触れてこなかったSNSの世界だけど、これはどんどん活かしていったほうがいいなと。医療や看護にも近いかもしれませんね。
相手から求められていることはなんだろうと考えたり、知らないことは周りに聞いて、知っている人に繋げていったり…。
こうした俯瞰的に考えることって、看護師としても鍛えられているものだと思います。
だけど、発信を始めて、他者から評価されるようになる過程で自信がついてきて、同時にいい場所だなと思うようになったんです。
これまで全然触れてこなかったSNSの世界だけど、これはどんどん活かしていったほうがいいなと。医療や看護にも近いかもしれませんね。
相手から求められていることはなんだろうと考えたり、知らないことは周りに聞いて、知っている人に繋げていったり…。
こうした俯瞰的に考えることって、看護師としても鍛えられているものだと思います。
編集部
ふちさんは兼業で働かれていますが、仕事をするうえで気をつけていること、意識していることはありますか。
ふち
今は看護師とイラストレーターとして2つのコミュニティがあるので、両方ともおろそかにしてはいけないと思っています。
周りからは大変じゃないかとも言われますけど、私にとっては居場所として居心地がいいので、大変だとはあまり思っていませんね。
メディカルイラストレーションは、実際に仕事にしている人は多くないですし、ひとりで黙々と作業することも多いのでちょっと孤高な感じはありますけど…。
メディカルイラストレーションという括りでなければ、SNSにはたくさんのクリエイターさんがいて、フォロワーさんもいるので、広くとらえるとみんな仲間だと思っています。そうしたところではすごく支えてもらっていますね。
あとは「からだずかん」もそうですけど、コンテンツのタイトルにもある通り、本当にひとつの図鑑を見ているような楽しさがあればいいなと思って描いています。
わくわくした気持ちと、ちょっとした豆知識と面白い漫画がついている。図鑑のように楽しく学べる表現を大事にしています。
また、アンケートのような参加型の楽しめるコンテンツを考えるのが好きで、一緒に参加して、一緒に勉強している感覚を持ってもらえるようにと意識しています。
周りからは大変じゃないかとも言われますけど、私にとっては居場所として居心地がいいので、大変だとはあまり思っていませんね。
メディカルイラストレーションは、実際に仕事にしている人は多くないですし、ひとりで黙々と作業することも多いのでちょっと孤高な感じはありますけど…。
メディカルイラストレーションという括りでなければ、SNSにはたくさんのクリエイターさんがいて、フォロワーさんもいるので、広くとらえるとみんな仲間だと思っています。そうしたところではすごく支えてもらっていますね。
あとは「からだずかん」もそうですけど、コンテンツのタイトルにもある通り、本当にひとつの図鑑を見ているような楽しさがあればいいなと思って描いています。
わくわくした気持ちと、ちょっとした豆知識と面白い漫画がついている。図鑑のように楽しく学べる表現を大事にしています。
また、アンケートのような参加型の楽しめるコンテンツを考えるのが好きで、一緒に参加して、一緒に勉強している感覚を持ってもらえるようにと意識しています。
編集部
好きなことを仕事にする、一方でイラストが嫌いになってしまうようなことはないんですか。
ふち
私はそういうジレンマはないですね。
学生の頃からスケッチやデッサンを描いていて、すごく自分らしいポップな表現をしている海外のアーティストに憧れていたので、今は自分が描きたかったものを描けている実感があります。
依頼元によってはイラストのタッチを変える難しさももちろんありますけど、それも楽しさに繋がっていますね。
学生の頃からスケッチやデッサンを描いていて、すごく自分らしいポップな表現をしている海外のアーティストに憧れていたので、今は自分が描きたかったものを描けている実感があります。
依頼元によってはイラストのタッチを変える難しさももちろんありますけど、それも楽しさに繋がっていますね。
医療とデザインが近くなるように
編集部
今後、ふちさんがやっていきたいことはありますか。
ふち
ゆくゆく考えているのは、いろんな人を巻き込んで「からだずかん」のジェネリック版のようなものとして、医療イラストのフリー素材サイトのみたいな形に繋げていけたらいいなと思っています。
これは私ひとりの力ではできないので、それこそいろんなイラストレーターさんの力も必要で、何年か単位でそうしたものを作っていこう進めているところです。
また、さらに遠い未来の話になるかもしれないですけど、もっと医療とデザインが近くなるような、そういう認識に変わればいいなと思っています。
今ある医療のデザインは、機能的である一方でお洒落ではないものもありますよね。
たとえば、スクラブやポロシャツにしても、そうしたもので働く意欲が変わって、「ユニフォームが可愛いからここで働きたい」ということもあると思うんです。
メーカーとデザイナー、イラストレーターを繋げてわくわくした環境に変えていけるような、そこに携わる一員でありたいです。
これは私ひとりの力ではできないので、それこそいろんなイラストレーターさんの力も必要で、何年か単位でそうしたものを作っていこう進めているところです。
また、さらに遠い未来の話になるかもしれないですけど、もっと医療とデザインが近くなるような、そういう認識に変わればいいなと思っています。
今ある医療のデザインは、機能的である一方でお洒落ではないものもありますよね。
たとえば、スクラブやポロシャツにしても、そうしたもので働く意欲が変わって、「ユニフォームが可愛いからここで働きたい」ということもあると思うんです。
メーカーとデザイナー、イラストレーターを繋げてわくわくした環境に変えていけるような、そこに携わる一員でありたいです。
編集部
医療とデザインが近くなるように…素敵ですね。
それでは最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
それでは最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
ふち
私はSNSを通して、本当に多くの人に支えてもらっていると思っているので、何か思ったことや困ったときには、我慢せずにどんどん発信していく、人に頼ることをしてもいいと思います。
それこそSNSじゃなくても、職場でも身近なところからでいいんです。
また、職場だけではない自分の居場所として、SNSでコミュニティをつくってみるのも面白いかもしれません。
それこそSNSじゃなくても、職場でも身近なところからでいいんです。
また、職場だけではない自分の居場所として、SNSでコミュニティをつくってみるのも面白いかもしれません。
編集部
SNSをうまく活用されているふちさんだからこそ、説得力のある言葉ですね。ありがとうございました!
聞き手・ライター:白石弓夏
看護師兼ライター。小児科や整形外科病棟で10年以上勤務。転職の合間に派遣でクリニックやツアーナース、健診、保育園などさまざまな場所での看護経験もあり。現在は非常勤として整形外科病棟で働きながらライターとして活動して5年以上経つ。
角野ふちさんがNurse Life Mixで担当する連載企画はこちら
看護師として働きながら、イラストレーターとして活動している
角野ふち(かどの ふち)と申します。
解剖生理学×イラストをコンセプトに人のからだをポップに描く
みて学ぶコンテンツ『からだずかん』を手がけています。
2022年からWebサイトを立ち上げSNSと併せて運営しています。
現場では、看護師の仕事服いわゆるスクラブや白衣が大好きです。
そんな”好き”や”わくわく”といった、楽しい事を日々考え描いています。