インタビュー#07 ハルさん、ジローさん「研究者としての視点から、SNSの発信で看護師さんをHappyに」

公開:2023.05.01

研究者の視点からSNSの発信で看護師さんをhappyに
看護師として働きながら、その知識や経験を生かして新しいビジネスを手がけたり、看護とはまったく別の世界でパラレルキャリアを歩んだり、忙しい看護の仕事をしながらでもプライベートを思いっきり楽しんだり…。ナースとしての新しい生き方をみつけようとしているナースたちの”働き方”や”仕事観”に迫るインタビュー企画。第7回は看護師としてYouTubeなどで教育コンテンツを発信しているオンライン看護学院のハルさん、ジローさんのお2人にインタビューしました!
ハルジローのオンライン看護学院さんのプロフィール

集中治療領域で看護師として働きながら、博士課程修了(救急・集中治療医学専攻)。YouTube/Instagram/TikTokで教育コンテンツを配信中。クラウドファンディングで作成した著書は達成率1458%(1,458,600円)となり看護学部門でAmazonベストセラーランキング1位を獲得。研究者としても多くの英論文を発表している。

同じ研究室で6年間ともに過ごしたことをきっかけに

編集部 編集部
まずはお2人のご経歴と現在のお仕事、活動についてお伺いしたいです。
ジロー ジロー
私は大学を出てからは、心臓血管疾患集中治療室(CCU)に勤めはじめ、3年ほど働いたところで大学院に進学しました。

大学院自体は修士と博士課程に進み、6年間で医学博士を取りました。
今は臨床にはおらず、研究をメインにしています。

研究内容としては、救急・集中治療分野でのせん妄について、成人も小児もどちらもやっています。
ハル ハル
大学院の研究室に入りました。そこで修士と博士を取りました。

成人ICUの研究をしていた修士2年目のときに、突然「来週から君たち2人、小児ICUだから」と言われて、ジローと一緒に小児の研究を始めるようになりました。

そして、博士課程が終わる直前ぐらいにYouTubeをはじめて、卒業してからインスタグラムも開始しまして(笑)。

現在は大学で研究職・教育職をしながら、週に1回は現場にも行かせてもらっています。
編集部 編集部
お2人は大学院が同じだったことで知り合い、そこからYouTubeなどの活動をはじめたと。
ハル ハル
そうです。僕たちは小児ICUにいたので、そこで子どもたちが「YouTuberってかっこいいんだよ」と話していたのがきっかけで、その翌日にYouTubeをはじめて、Youtuberになりました。
ジロー ジロー
え、かっこいいのは博士じゃないのか…って思いましたよね。
編集部 編集部
翌日にすぐ動画を作ることになったのは、お2人がそれなりに関係性があったからだと思うんですけど、なにか仲良くなるきっかけはあったんですか。
ジロー ジロー
いや、別に仲は良くないですね(笑)。
ハル ハル
YouTubeなどのやりとりを見てもらうとわかるかもしれませんが、お互い試練の多い環境を好むというか、要は同じ飯の窯を食った仲というか…。

別に仲良くなりたいわけじゃないけど、ひとつの部屋に押し込められるとそれでも関係性ってできるじゃないですか、それに近いです。
ジロー ジロー
そうそう。
それに、相手が苦しんでいるときが楽しい(笑)。
ハル ハル
それ、めっちゃわかる。
二人の出会いは大学院の頃から
編集部 編集部
それは意外でした。
もしかしたら、それはそれでユニットの活動が続く秘訣かもしれないですね。
ジロー ジロー
たしかに仲良くはないんですけど、大学院でずっと同じ研究室にいたので、だいたいの思考過程がわかる、何をしでかすかわかる感覚はありますね。
ハル ハル
そういう点ではストレスは少ないですよね。

だって、研究室のデスクも隣で、職場も同じだったんですよ。

仕事が終わって研究室に戻るとジローがいて、それが6年間…嫁より一緒にいますからね。

研究者としての奉仕の精神がSNSの発信に?

編集部 編集部
スタートは子どものひとことからでしたが、YouTubeを本格的にやっていこうと思ったきっかけはあるんでしょうか。
ハル ハル
いや、それも全くないですよ。

研究者って、研究自体はお金になりにくいですよね。むしろ論文を出すときにはお金を取られるくらいなので…基本的に奉仕の精神みたいな気持ちがあるんだと思います。

動画も同じで、YouTuberになったからには、とりあえずコンテンツを出さなきゃみたいな感覚があります。
編集部 編集部
「年に1本論文を書かないと研究者じゃない」みたいな感覚ですか。
ジロー ジロー
本当にそれに近いです。
止まったら終わる感覚。それでずっとやっている気がします。
ハル ハル
わかる、わかる。
ただ、ひとつだけ決めているのは「看護師さんをHappyにする」ということですね。

YouTubeのオープニングでも言っているセリフですけど。
編集部 編集部
なるほど。
今はYouTube以外のメディアでも発信されていますけど、SNSごとになにか意識していることはありますか。
ジロー ジロー
SNSごとではわけてないですね。

どちらかというとシリーズのような感じで、難易度の高いもの低いもの、一般の人でもわかる内容という風に分けて作っています。
ハル ハル
それでいうと、研究者が難しい話をすることって、患者さんの生命を助けることにダイレクトに寄与しにくい気がして。

すごく難しい話を、わかりやすくまとめて発信する人たちが出てくることで、難しいままだったら理解されなかった情報が広まるんですよね。

なので、自分たちもそうやって知識を広めるイメージではいるかもしれないです。

あとは看護師さんって、忙しくて本を読む余裕を持てない方も多いと思うんです。

長文は難しくても箇条書きなら読める人もいて、YouTubeも長い動画じゃなくショート動画なら観られる人もいて。

そうやって多くの看護師に知識が広がれば、患者さんにも直接寄与できるのではないかと考えています。

研究×SNS、最近注目している研究について

編集部 編集部
お2人は研究もSNSの発信も積極的にやられていますけど、研究にSNSを活用することもできるのでしょうか。
ジロー ジロー
SNSは意見も集まりやすいので、研究の方向性を決めるときやアンケート系の研究に絡めると面白いでしょうね。

過去にFacebookではありますけど、成人ICUと小児ICUの人たちの燃え尽き症候群に関する研究をした際に、メーリングリストで回答を募ったことがありました。
ハル ハル
僕もどういう人間がどういう行動をするのか、患者さんにどういう影響が出るかみたいな研究をしようと考えていて。

まだ公にはできないんですけど、実臨床の現場だとなかなかデータが取りづらい部分もあるので、アンケートをとるという意味では、SNSでみなさんのご意見を反映することは今後やってみたいですね。

そう思って1年経ちました(笑)。
編集部 編集部
面白そうですね。ぜひやってほしいです(笑)。
ちなみに、ご自身が関わっている研究以外で最近面白いと思ったものってありますか。
ハル ハル
僕は瞑想ですね。
看護師って、自分の時間を生きていない人が多いんですよ。

例えば、飲み会で職場の先輩の愚痴を言うとするじゃないですか。

それって、自分が今飲み会で楽しもうとしているのに、先輩や職場のことで時間を奪われているわけです。それが僕はおかしいなと思って。

自分の今この瞬間に集中しなきゃいけない、その集中する力っていうのは筋トレみたいに鍛えないといけないんですよね。

その鍛え方のひとつが瞑想です。

自分の呼吸だけに意識を持っていくとか。それができるようになると、オンオフの切り替えがうまくできるようになったので、看護師のみなさんにもおすすめです。
編集部 編集部
それは看護師としても興味深いし、身に着けたいですね。
ジローさんは気になる研究はいかがでしょう。
ジロー ジロー
僕は以前に看護師の「燃え尽き症候群」をテーマにSNSを使った研究していて。

それに関連する研究は興味深いものが多いですね。

例えば、病棟でも職場の雰囲気が悪くなるときってありますよね。
そのときに、どういう性格の人から燃え尽きていくのか研究されていて。

ネガティブな感情を抱いた時に、それを伝えられない人が燃え尽き症候群になりやすいことがわかったんですね。

じつは、人にネガティブな気持ちを伝えるのが得意ではないというのは、日本国内の約40%といわれているので、病棟の雰囲気が悪くなると燃え尽き症候群になる人が増えやすい、共感疲労が生じやすいとわかった研究は興味深かったですね。
ハル ハル
元々は、せん妄になりやすい患者さんの性格を研究していたところからスタートして、燃え尽き症候群の研究に繋がっているのも面白いですね。
ジローさんとハルさんの燃え尽き症候群に関する研究論文
編集部 編集部
では、最後になりますが、読者に向けたメッセージをお願いします。
ジロー ジロー
私はアウトプットが大事だなと思います。

20代の頃はとにかくインプットに目が行きがちですけど、この歳になるとアウトプットのほうが実は大事なんじゃないかと感じています。

SNSの発信もそうですけど、アウトプットすることで自分自身の勉強にもなるし、人とも繋がれるし…。

なので、なにかモヤモヤと悩んでいることがある人や、伸び悩んでいる人は、ぜひインプットばかりではなく、アウトプットにも目を向けてほしいと思いますね。

アウトプットといっても、今自分が読んでいる本で、勉強したことをまとめるでも、他の人に話すでも簡単なものからでいいと思うんですよ。
編集部 編集部
たしかに、そうですよね。

大きなことでなくとも、まずは普段頭の中にあることから少しずつアウトプットしていけるといいですね。

では、ハルさんもメッセージをお願いします。
ハル ハル
キャリアっていろんな定義がありますけど、僕は経験から得た能力のことをそう呼んでいます。

なので、キャリアを持っていない看護師っていないです。
小児科やオペ室で経験を積んで一般病棟もやってきましたというのは、その人にしかわからないと思うんです。

そして、キャリアを積み上げてこられたのは、もちろん自分の力もありますけど、患者さんやお世話になった先輩のおかげでもあると思うんですよね。

なので、その人のキャリアというのは、その人にしかなくて、それはすごく魅力だと思うので、ぜひ自らアウトプットしていってほしいですね。

それが新たなキャリアに繋がるかもしれません。ぜひ一緒に頑張っていきましょう。

……あ、エモいこと言っちゃったかな(笑)。
ジロー ジロー
校長先生みたいな言葉だな、どういう立場なの(笑)。
編集部 編集部
(笑)。
意図せず(?)お2人のメッセージが繋がって嬉しいです。今日はありがとうございました!

聞き手・ライター:白石弓夏


看護師兼ライター。小児科や整形外科病棟で10年以上勤務。転職の合間に派遣でクリニックやツアーナース、健診、保育園などさまざまな場所での看護経験もあり。現在は非常勤として整形外科病棟で働きながらライターとして活動して5年以上経つ。

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ハルジロー式!ナースの放課後相談室
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ハルジロー ハルジロー

集中治療領域で看護師として働きながら、博士課程修了(救急・集中治療医学専攻)。Youtube/Instagram/TikTokで教育コンテンツを配信中。
クラウドファンディングで作成した著書は達成率1458%(1,458,600円)となり看護学部門でAmazonベストセラーランキング1位を獲得。
研究者としても多くの英論文を発表している。

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