インタビュー#05 miu「壊れたりかけたりしても直しながら、今あるものを⼤切にしていきたい」

公開:2023.04.24

わたしと仕事#05miu 壊れかけたりしても直しながら、今あるものを大切にしていきたい
看護師として働きながら、その知識や経験を生かして新しいビジネスを手がけたり、看護とはまったく別の世界でパラレルキャリアを歩んだり、忙しい看護の仕事をしながらでもプライベートを思いっきり楽しんだり…。ナースとしての新しい生き方をみつけようとしているナースたちの”働き方”や”仕事観”に迫るインタビュー企画。第 5 回は 10 年⽬の看護師である miu さんにインタビューしました︕
miuさんのプロフィール

⼤学卒業後は総合病院の内科系病棟に勤務後、働く環境を変え在宅・慢性期領域へ転向。途中、認定教育課程を目指していたが、コロナ禍もあり在職中に他のキャリア形成へ。
インスタでは⼿仕事や花、うつわなど、暮らしを愉しむことについて発信中。

さまざまな変化があるなかでたどり着いた、地元の医療に貢献する道

編集部 編集部
miuさんは、総合病院の内科系病棟で勤務されていて、そのなかで認定看護師の道を⽬指していた時期があったんですね。
miu miu
学⽣の頃、ゆくゆくは救命・集中治療の領域に⾏きたいと思っていたので、そこを見据えて病棟を選びました。
配属された病棟で新しい目標や自分のやりたい看護が見つかり、次のキャリアを考えた形でした。
編集部 編集部
miuさんは⻑く⼀つの場所で働かれていましたが、振り返ってみてどうですか。
働くなかでなにか意識していたことがあったのか、もしくは⾃分に合った職場を選ぶことができたのか、なにか⻑く働く秘訣みたいなものはあったんでしょうか。
miu miu
元々、地元の医療に貢献したいという気持ちがあり、地元の医療施設で核をなしている病院を探し、就職を決めました。

また資格取得やキャリアアップという⽬標もあり、続けてこられました。

県外での就職を考えた時期もありましたが、研修や学会などで県外に出て学べることを学んで、それを地元に還元するような働き⽅が私には合っていると考えて、残ることを決めました。

今では在宅の分野で地元の医療に貢献できていると実感しているので、続けることができています。
編集部 編集部
そうだったんですね。
コロナ禍で変化が生じてから頃から約 3 年経ちましたが、またチャレンジしようというお気持ちはあるのでしょうか。
miu miu
今は状況も変わり、⽬標も変わりましたね。

3 年前の 20 代の頃と 3 年経った 30 代の今だと、仕事と私⽣活のバランスにも変化がありました。

周囲の環境の⾯でも、医療ニーズの変化とともに、組織として優先すべきことや求められる人材にも変化があったように感じています。

そのような背景から、私⾃⾝の変化と周囲の変化もあり、⽬標⾃体も変わっていきました。

コロナ禍をきっかけにインスタでの発信をはじめたことで、仕事と暮らしへの向き合い⽅や⾃分の好きなこと、やりたいことも明確になった気がします。

患者さんと向き合うことで、⼈⽣や暮らしを考えるように

編集部 編集部
先ほど、地元の医療に貢献したい気持ちがあるとお話されていましたが、miuさんが看護師になった理由と関係しているのでしょうか。
miu miu
いえ、元々は、⼿に職をつけて自立して働ける仕事に従事して、それを担保に⾃分の好きなことをしようと決めて、看護師になりました。

なので、看護師に憧れがあって、なにか強い志があって看護師になったわけじゃないんです。

今は看護師になってよかったなと思うことがとても多く、自分の天職だと思えているので、この仕事を選んだ自分に感謝しています。
編集部 編集部
看護師になってよかったと思うことは、どんなことですか︖
miu miu
病棟にいたときも、今携わっている領域もそうですが、看護の世界は⼈の⽣死に深く関わる⼤切な仕事だと思っています。

本⼈や家族の意思決定に関わって、さまざまな⽅の考え⽅に触れて影響されるというか、⾃分の残りの⼈⽣をどう⽣きたいか、誰になにをゆだねたいか、⾃分はどうやって意思決定をするのかとか、そういうことを考えることって、普通に⽣きていて⽇常⽣活で考えることないじゃないですか。

そうした死⽣観や様々な人の価値観に関わることで、⾃分の⼈⽣や、暮らしも深く考えるようになって、⾃分⾃⾝も強くなった気がするんです。
編集部 編集部
患者さんとの関わりのなかで、⾃分⾃⾝を⾒つめ直して、向き合うことをしてきたのですね。
その強くなったというのは、miuさんにとってどのような変化なんでしょうか。
miu miu
そうですね…弱かったわけではないですけど、⾃分はこうだと客観的にわかっていなかったことが多かったのが、⼈の⼈⽣を外から⾒て関わることで、⾃分の⼈⽣や考えを客観視できるようになってきたのが⼤きいかもしれません。

⾃分のことを客観視できるようになると、あまり⼼が動じなくなる気がするんです。

うまく⾔えないですけど、悲しいとかつらいことも、こういうときに⾃分はつらい気持ちになるんだと客観的にわかっていると、その先にうまく向き合える気がしています。

どう考えて、どう動いていくかと先に進めるんですよね。ちょっと抽象的ですけど。
編集部 編集部
いわゆるメタ認知みたいな感じですかね。
⾃分のことを俯瞰的に捉えることで、⼼が落ち着くと。miuさんのインスタの発信と繋がるなと思います。

⾃分が好きなもの、考え、暮らしを発信

miu miu
コロナ禍で一つのキャリアを諦めて、どこにも⾏けないし、なにもできないし、家でできることをやってみようという気持ちからインスタの発信を始めたんです。

当時は看護師で暮らしとか発信している⼈はあまりいなかったので、⾃分が好きな花やうつわ、料理について記録に残していこうと思いました。

あとは、今の旦那さんと交際した頃で同棲したときのお⾦の分担とか、困ったこととかもですね。
miuさんのinstagramより
編集部 編集部
インスタで 2 年ほど発信されるなかで、⾃分⾃⾝の考え⽅や感性的な部分でこれはけっこう⼤きく変わったなと思うところはありますか。
miu miu
いや、変わらないかもしれないですね。
変わらないことのほうが多いと思います。

SNSって良くも悪くもいろんな情報が⼊ってくるので、そのなかで⾃分らしさを⼤事にしようと思ったら、⾃分の軸みたいなところって案外変わらなかったです。

それがなにかと⾔われたら、うまく⾔葉にできないんですけど(笑)。
編集部 編集部
今、ちょっとそこ聞きたいなと思ったんですけど(笑)。
⾃分のなかで、⼤事にしている考えってどういうところなのかなと。
miu miu
ひとつ⾔えるのは、「〜すべき」みたいな考え⽅はあまり好きじゃないことですね。

その⼈の考えや暮らし⽅、価値観って本当にさまざまだから、その⼈が本当にそれでいいなら私はいいと思うようになりました。

でも、自分はこう、っていう自分の輪郭は⾃分を俯瞰してみないと本当にそれが⾃分の考えなのかわからない気がします。

⾃分と世の中の境界が曖昧になっていると、⾃分が正しいと思っていることは世の中でも正しいみたいな認識になってしまうし、その反対もしかり。

⾃分はこうだけど、あなたはこうなんだね、私もいいし、あなたもいいというのが私の理想なんです。

そう思えるためには、自分を客観的に知ることが大切というか。

インスタでいろいろ相談されることもありますが、⾃分の意⾒を押し付けすぎないようにして、⾃分の答えははっきりとは⾔わない、あくまで私はこうですと伝えるようには意識していますね。
編集部 編集部
⾃他の境界を引くことは⼤切ですね。
miuさんは⽇々の⽣活のなかで、⾃分の好きなものを⼤切にしていると感じます。

なにかをするより、しないことも⼤切

miu miu
今となっては、⾃分はこれが好きだとわかっていますけど、⾃分の好きなことや、⾃分の⼈⽣の軸がわからなかったりしても、とりあえずやってみることも大切だと思っています。

⾃分の興味あることや⾯⽩そうだなと思ったことなど。逆に全く興味がないことでもいいんです。

昔読んだ本に「20 代のときには詰め込んで、30 代には捨てる」みたいなことが書いてありました。

それが印象に残っていて、いろんなことに触れて経験して、その中で本当に⾃分の好きなものだけを残して、今は他を⼿放した、⼿放し終わった状態だと思います。

いろんな⼈の考えに触れて、⾃分の価値観をはっきりさせていくことが、自分の暮らしや自分自身を大切にしていくヒントになるのではと思っています。
編集部 編集部
⼿放し終わったというのは、どんなことをしたんでしょうか。
miu miu
なにかをするより、しないほうが多いかもしれません。

自分が苦しいこと、辛いことは無理をしない、そうすると自分の本当に好きなものをちゃんと大切にできる気がします。

たぶん他⼈と⽐べるから「これはやらなきゃいけない」「こうしたほうがいいのかな」という気持ちになるんだと思います。

⾃分の暮らしを⾒つめて、⾃分の軸がわかってくると、「⾃分はこうしたい」という考えになっていきます。
miuさんのinstagramより
miu miu
また、ミニマリストや丁寧な暮らしのように、暮らしのカテゴリー分けがあるじゃないですか。

それに⾃分を当てはめると安⼼するんですけど、それも結局は⾃分も「こうあるべき」な考えになってしまうので、私は⾃分らしい暮らしから少し遠ざかってしまう気がします。

その⼈の暮らしはその⼈の暮らしであって、⾃分が好きな暮らしで、⾃分が⼼地よければそれでいいと思うんです。
編集部 編集部
なにか今後の⽬標などはありますか。
miu miu
あまりはっきりとした⽬標はないのですが、今あるものを⼤切にすること、⼤事にしたいと思っているときにちゃんと⼤事にしたいことが⽬標でしょうか。

私の基盤としてあるのはそこですね。

陶器のうつわのように壊れたりかけたりしても直しながら、⼤切にしていきたい…みたいな⼈⽣観かもしれないですね。
お気に入りのうつわは、割れても金継ぎして大切に使い続けるのがmiuさん流
編集部 編集部
それでは、最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
miu miu
看護師の仕事って、楽しいことや綺麗なことばかりじゃなくて、つらいことも苦しいことも、すごくたくさんあって、⽉並みではありますが本当に⼤変な仕事だと思うんです。

だけど、そのなかで楽しさとかやりがいとか、看護師としての⾃分の視点を今後も少しずつ発信していけたらいいな、変わらずに好きなものを発信できたらいいなと思っています。
編集部 編集部
miuさんは看護観に関するコラムの連載を担当予定ですよね。楽しみにしています。
ありがとうございました︕

聞き手・ライター:白石弓夏


看護師兼ライター。小児科や整形外科病棟で10年以上勤務。転職の合間に派遣でクリニックやツアーナース、健診、保育園などさまざまな場所での看護経験もあり。現在は非常勤として整形外科病棟で働きながらライターとして活動して5年以上経つ。

miuさんがNurse Life Mixで担当する連載企画はこちら

暮らしと看護。
暮らしと看護。
miu miu

料理、花、うつわ。看護が好きな病棟看護師。Instagramでは、忙しくても自分の好きな暮らしを大切にしたいという思いから、日々の献立やルーティンなど暮らしの記録を綴っています。ストーリーでひっそり行う、お悩み相談も人気。ここではInstagramではあまり触れることがない、自分の看護のお話をしています。

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