インタビュー#03 ちづ「学んで『わかった』『楽しい』という経験の大切さを伝えたい」

公開:2023.04.19

インタビュー#03 ちづ「学んで『わかった』『楽しい』という経験の大切さを伝えたい」
看護師として働きながら、その知識や経験を生かして新しいビジネスを手がけたり、看護とはまったく別の世界でパラレルキャリアを歩んだり、忙しい看護の仕事をしながらでもプライベートを思いっきり楽しんだり…。ナースとしての新しい生き方をみつけようとしているナースたちの”働き方”や”仕事観”に迫るインタビュー企画。第3回は看護師で勉強に関する発信をしているちづさんにインタビューしました!
ちづさんのプロフィール

高校生でマクドナルドのバイトでお客様係や教育係を担当し、短大を卒業後は正社員に。その後、妊娠・出産を機に退職し、バイトでネットショップの運営やTOEICの試験官(副責任者も担当)、WEBライターの仕事につく。30歳のときにパートで病院のリハビリ助手として勤務し、5年後となる35歳のときに看護学校へ入学し、看護師に。

向いていると言われて、出会った看護師の仕事

編集部 編集部
看護師になる前は、さまざまなところで働かれていたんですね。
なにか仕事を選ぶなかで共通していたところなどはあるんでしょうか。
ちづ ちづ
バラバラですよね。特に共通していたことはないですけど、子どもも3人いましたから、日給や仕事の予定の立てやすさ、仕事環境などで選んでいました。

たとえば、TOEICは年8回日曜日と開催日が決まっていて、スーツを着るお堅い仕事で、真面目な人が多かったので私には向いていたなと思います。
WEBライターは家にいながらできる仕事で、リハビリ助手も9~13時の勤務でちょうど良かったんです。
編集部 編集部
バイトであっても教育係や責任者などの立場にあったのは、自分でも希望などを出していたのでしょうか。
ちづ ちづ
元々、教育とかグループを統括するようなことは好きだったこともありますが、特別なことはしていないです。

マクドナルドも当時はある程度マニュアルやトレーニングに沿って一生懸命働いていけば、そうした道はわりと珍しいことではありませんでした。

TOEICも受験者が1000~2000人と大規模になるところもあり、試験官のスタッフだけで100人ぐらいいると、そのなかで統括して、スムーズな現場の運営方法を考えて動くのが好きでしたね。
編集部 編集部
それからリハビリ助手になられて、看護師になろうと思ったことにも繋がると思うのですが、それはどのようなきっかけがあったのでしょうか。
ちづ ちづ
病院のリハビリ助手の仕事では、ホットパックや低周波治療器、一部の牽引など、外来で物理療法を受ける患者さんの対応をしていました。

それまではWEBライターの仕事でずっと家にいたので、そろそろ外に出て仕事がしたいなと思っていたんです。
ちょうど子どもが通っていたテニスで知り合ったママ友さんが、その病院で働いていて誘われました。

そこで働くようになり、患者さんとのやりとりを通して生き生きと働いていたようで、同僚から「看護師に向いているよ」と言われたこともひとつきっかけでした。

そして、同僚の奥さんで看護学校を受験しようとしている方と知り合ったことで、看護師を目指すことにしました。
実は一度夫には受験を反対されたんですけど、1年越しで「やっぱり看護師になる」とプレゼンして説得しました。
リハビリ助手時代の仲間とのスナップ写真

「えらいこっちゃ、勉強せなあかん」という焦りから

編集部 編集部
インスタで勉強アカウントを始めたのは看護学生の頃だということですが、なにがきっかけだったんでしょうか。
ちづ ちづ
当時はインスタがではじめて1~2年の頃で。
最初は子どもがやっていたので見るだけだったんですけど、そこで勉強のアカウントがあることを知ったんです。
ちょうどその頃、看護学校のテストをひとつ落としてしまっていて「えらいこっちゃ、勉強せなあかん」と思って、自分もやり始めたのがきっかけですね。
初めてインスタグラムに投稿した時に掲載したノートの写真
ちづ ちづ
最初は、自分の勉強した記録とちょっとした日記のような感じでアップしていました。
だんだんとフォロワーさんが増えてきて、同じような境遇の人、同じ106回の国家試験を受験する人や107回108回の後輩もタグで集まってきて。

実際の同期や後輩ではないですけど、全国にいる人たちで集まって「ここの勉強こうしたらよかったよ」と発信を通じて情報交換するようになっていきましたね。
編集部 編集部
ちづさんのインスタの投稿を見ていると、特に最近はなぜ勉強する必要があるのか、ノートを作ったきっかけなどもまとめられているのが印象的で、先ほど話していた真面目さに少し繋がる気がしますね。
ちづ ちづ
そうですね。たぶん、勉強は大事だということを伝えたいんだと思います。
やっぱり職場が人手不足で忙しいなどいろいろ事情はあると思いますけど、1年目とか最初のころは勉強を頑張っていても、その後は情報を更新しないままのことも多いのではないかと思うんです。

現場で得る知識や技術ももちろん大事ですけど、それ以上に命を預かる仕事として学び続けることは必要だし、丁寧な看護をしていきたいなという気持ちがありますね。
編集部 編集部
ちづさんが発信を続けるなかで大変だな、難しいなと思ったことはありますか。
ちづ ちづ
やっぱり伝わりにくいときはありますよね。
たとえば過去に、とある方法を紹介したもので、私は基本となる根拠をしっかり押さえてほしい、そうすることで応用に繋がるということを伝えたかったのですが、コメントで簡略された裏技的なものが広がってしまうことがありました。
それから、私はこういう意図があってとなるべく書くようになりましたね。
あとは、顔を見たことがない相手との文章だけのやりとりは、なかなか相手の意図を汲み取るのが難しいなと感じますね。
私なりにいろんなご意見をいただいて、試行錯誤しながら今に至っています。

自分も元気をもらって、毎日勉強を続けられている

編集部 編集部
フォロワーさんも5万人といるなかで、頑張ってきてよかったなと思ったことはありますか。
ちづ ちづ
たくさんフォロワーさんがいて、共感してくださる方がいて、「一緒に勉強はじめました」「これがわかるようになって看護の仕事が楽しくなりました」「元気もらっています」「頑張れそうです」というコメントが来るとやっぱり嬉しいですね。

私のほうこそすごく元気をもらっていて、勉強を続けられているので。もしかしたら、インスタをはじめていなかったら、ここまで勉強は続けていなかったかもしれません。

半分使命みたいなところもありながら、毎日勉強するのはやっぱり自分も知りたいことがあるから、わからないことがあるからです。

私も看護師の経験としては長いわけではないですけど、自分がやってきたことは間違っていないなと思えて心の支えになっています。
編集部 編集部
いいですね。それでも毎日勉強というのはすごいです。時間を捻出するのも大変じゃないですか。
ちづ ちづ
よく言われます(笑)。
でも、1日のなかで10分や15分です。基本的に私も自分ができる量しかやりませんから。

よくよくみなさんの話を聞いてみると、きっちりノートを書こうとか、丁寧に調べようとか机に向かってとか、そういうのが勉強と思う方も多いみたいですね。

私はそんなに綺麗にまとめなくてもいいし、さっと調べるだけでもいいと思っています。
付箋に書くこともあって、ソファに寝ころびながらスマホでパッと調べることもありますから。本当に自分が続けられることしかやらなくていいんです。

その日その日、自分に必要な勉強で、それでいいんですよって最近よく言っています。
褥瘡の計測について勉強した時の付箋
血液培養の採血について勉強した時の付箋
ちづ ちづ
私の口癖でもありますけど、「時間は作るもんやから」と思ってやっていますね。
これは看護師の仕事でもそうで、「時間があったら洗髪しよう」じゃなくて、「今日〇時に洗髪しよう」と決めています。そうじゃなかったら私も毎日は無理ですね。

看護師のスタートがもっと明るくいいものになるように

編集部 編集部
今後力を入れていきたいことや、目標などはありますか。
ちづ ちづ
夢みたいなものですけど、教育に携わることはやっていきたいですね。
今でも看護師さんの悩みを聞くことはありますが、それを解消できるような場所があったらいいなと思っています。

ひとつイメージしているのは、派遣型の教育専門の看護師がいたらいいなということです。
現状としては、日々の業務をしながら掛け持ちで教育担当をやっていますよね。
学生や新人指導もやりたい人がやるのが一番ですけど、多くは3~4年目になって順番でやることが多いと思います。
なので、派遣であっても教育専門の看護師が学生や新人の頃から関わることで、経験を積みながら看護の楽しさを教えつつ、育てていけるようになれたらいいですよね。
1年目がつらいと泣いている新人看護師さんは多いですが、それが当たり前な状況は変えたいと思っています。

あとは、学生や若手看護師、ブランクがある看護師が勉強のことや看護技術のことについて相談できるようなフリースペース、フリースクールのような、ふらっと立ち寄れる敷居の低い場所もあったらいいですね。
そうした看護師のサポートが広がったら、看護師のスタートがもっと明るくていいものになるんじゃないかなと思っています。
編集部 編集部
いいですね、看護師のスタートがもっと明るくいいものに…。それでは、最後に読者の方へ向けてメッセージをお願いします。
ちづ ちづ
看護師の仕事が大変なのはもちろんなんですけど、楽しいこともたくさんあるともっと伝えていきたいです。

実際自分が勉強して、それが患者さんの病態の理解や看護ケアに繋がって、「そうか、なるほど」と思えることがすごく楽しいんですよ。

この「わかった」という経験が、私はとても大切だと思っています。そして、看護師の仕事が楽しいと感じる人が1人でも増えたらと願っています。
編集部 編集部
ちづさんの教育に関するところで、1本軸が通っているのをすごく感じました。ありがとうございました!

聞き手・ライター:白石弓夏


看護師兼ライター。小児科や整形外科病棟で10年以上勤務。転職の合間に派遣でクリニックやツアーナース、健診、保育園などさまざまな場所での看護経験もあり。現在は非常勤として整形外科病棟で働きながらライターとして活動して5年以上経つ。

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ちづ ちづ

家庭あり子供3人の主婦が38歳で看護師になりました。
セカンドキャリアに看護師を選んでこの春で7年目。
毎日勉強しているノートの投稿が中心のインスタグラムのフォロワー数は5万人越えです。

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